当時6年生のAが地域の「見守り隊」に綴ったお礼の手紙
「母親に『塾へ行く』と伝え、現金500円とスマホと刃物3本を持って家を出たのが昼頃。自転車でJR武蔵浦和駅に向かい、電車の中で『今日人を殺す』と決めたそうです。
新宿駅で降車した後は、人通りの少ない場所を探して歩き続けたといいます。そして“自分のイメージに一致した路地”を見つけ、『いまやるしかない』と凶行に及んだ。被害者2人は、約100mも後をつけられていたそうです」(前出・社会部記者)
精神科医の片田珠美さんは、凶行が8月末に起きたことに着目する。国の自殺総合対策推進センターによると、中高生の自殺は8月末から9月上旬に多く見られるという。
「一年で最も中高生の自殺者が多い日は、夏休みが終わり新学期が始まる9月1日だといわれ、夏の終わりには自殺のリスクが高まります。
自殺願望を抱いたとき、他人を道連れに無理心中を図る行為を『拡大自殺』といいます。Aが“死刑になりたかった”と語っていることから、今回はこのケースと考えていい。何らかの理由でAの愛情欲求は満たされておらず、被害者となった母娘への羨望が刺傷につながったのではないでしょうか」(片田さん)
母親は「Aは、弟との扱いの差や、私が不登校や受験勉強について責めたことに不満があったのかもしれない」とも話しているという。
Aが学校に行かなくなったのは、コロナが猛威を振るい始めた時期と重なる。
「家族で顔をつきあわせる時間が増えて、不満が蓄積していったのかもしれません。一般的に中学生は、反抗期で愛情欲求も強い、難しい時期です。親としてはわが子に対して、過干渉に気をつけながら、無条件の愛情を示し続けるしかありません。何があっても私はあなたを守る、というメッセージを送り続けるべきです」(片田さん)
新宿駅から犯行現場までは直線距離で約3.5km。歩みを進めたAは、仲睦まじい母娘を目にし、何を思ったのか。
※女性セブン2022年9月8日号