そして、M議員に近しい非教会員の後援者によれば、この騒動の最中、M議員はこっそり教会員達に「こんな騒動に負けないで、応援している」「マスコミは悪い一面だけにフォーカスする」などの連絡を入れているというのである。SNSから関係ありとうかがわせる記事を削除しておきながら、なぜ水面下で接触しているのかとM議員に改めて話を聞くと、さらに強い口調で独自の見解を述べ始めた。
「あの団体が悪いことをしているというのなら逮捕されるでしょう? でも逮捕されていないんですよ? そりゃ暴力団に選挙活動のお願いをすることはありませんが、教会員さんには今後も、いろいろな形で支援していただきたいですし、応援もしてもらっていますから。自民みたいに、関係性が大きな票田になるならまだしも、私みたいな地方議員までいじめるなんて、そっちの方がおかしい」(M議員)
旧統一教会と政界の関係が社会問題として注目を集めるなか、沈黙を続けたまま関係を維持しようと画策するM議員。もはやM議員が政治家という自身の立場を維持するには、関係を持たずにはいられないのか。
M議員のように、表向きには強く否定せず「世話になっている」「いい人もいる」と、頑なに「教団批判」を避ける人たちは他にもいるようだ。親が旧統一教会の熱心な信者で、自身も二世信者だったという首都圏在住の丸山恭子さん(仮名・40代)が打ち明ける。
「いわゆる泡沫候補、といわれる人たちに多いですね。地元で小さな選挙がある度に立候補するような、ある意味で”ネタ議員”的な人たちの中には、ここぞとばかりに地元にある教会の支部を訪ねたりして、関係を作っていたと聞きます。彼らは、選挙には出るが人も金もない。教会と自民党の関係が崩れた場合、宙に浮いた組織票を狙う人たちはいるでしょう」(丸山さん)
いわゆる常連候補者に対して、うがった見方のようにも思えるが、以前は選挙の手伝いや議員関連のイベントに足繁く通うなどしていた経験が、丸山さんにそう言わせるのか。現在は脱会したというが、今では教義も「なぜ信じていたのか説明できない」と笑って言う。個人や団体の素性を隠して候補者に近づくように指示されることもあった体験から、旧統一教会側のやり方もよくないと思っているが、現在、世間からの厳しい声にさらされている教会員に取り入ろうする議員や候補者は許せないと憤る。
「結局、使えるうちに使おう、いいように消費してしまおう、という魂胆が見え見え。教団が、政界に食い込み日本を乗っ取ろうとしている、なんて言われていますが、私からは逆に見えますよ。教会と関係のあった自民党や立憲民主党などの議員だって同じ。ずっと頼っておいて『知らなかった、今後は手を切る』なんて卑怯すぎませんか」(丸山さん)
かつて選挙活動に加わった体験を持つ丸山さんからは、M議員のような人たちは、熱心にタダ働きしてくれる人たちを手放したくないだけのように見えるということらしい。
安倍晋三前総理銃撃事件に端を発し、与党・自民党と旧統一教会(家庭連合)の関係を大手メディアが追及し続け、今度は、岸田文雄総理との関係まで取りざたされ、落ち着く気配はない。そんな騒動の渦中にあってもなお、政治活動のため、そして票や当選だけのために彼らに近づこう、協力してもらわないと議員を続けられないと本気で考えている人たちがいる。政策を実現したくて議員を目指すのが本来だろうに、議員を続けるための手段のほうが彼らは重要らしい。当選するための手段ばかり、大事にするような候補者が議員になるような選挙制度について、真面目に向き合うときがきているのではないか。