絵本、展覧会、映画とクラウドファンディングによって実現させてきた西野亮廣(AFP=時事)

絵本、展覧会、映画とクラウドファンディングによって実現させてきた西野亮廣(AFP=時事)

 しかし普及するにつれ識者から「これは『こじき罪』では」と一部のクラファンが指摘されるようになった。とくに「個人の夢」系のクラファンである。

クラウドファンディングなのか、軽犯罪法「こじき罪」なのか

 直近ではユーチューバーで少年革命家を名乗るゆたぼん(13歳)が「ゆたぼんスタディ号」で日本一周するためにクラファンを募ったことが賛否両論となった。「元気と勇気を届けたい」などと主張しているが、これは「こじき罪」にあたらないのか。ゆたぼんの行為は以前から物議をかもしていたが、本人の挑発やそれにともなう炎上の繰り返しで問題点がより目立ってしまった格好だ。

 実際、配信における「こじき罪」の逮捕例はある。2015年、香川県の高松駅で「お年玉」と称して金品を乞うた模様を配信した23歳無職の男がまさしくこの「こじき罪」、軽犯罪法違反の疑いで書類送検された。しかし、これはあくまで乞食行為をネットで配信しただけで、ネットの向こうの不特定多数に乞うたわけではない。

 この件、複数の法律関係者やジャーナリスト仲間に意見を聞いた。結局のところ、クラファンなどのネットでの不特定多数に対する金品要求行為が「こじき罪」にあたるかどうかはおおよそ、

●自身の利益を目的としない
●目的が明確かつ必要性を満たす
●反復性(繰り返しの行為)がない
●哀れみに訴えない
●社会的な意義および公益性がある
●対価の有無と金額の妥当性がある

 以上の条件がクリアできるかによると思われる。あくまで法解釈であり、判例を含めた最終的な判断は個々の事案によって変わるが、基本的にはこのあたりが問題となっているように思う。

 たとえば、実際にあった事例だが「自分が大学院に行きたい」から学費を乞う、「ドミノ倒しをしたい」から経費を乞う、「写真集を出したい」から出版費用を乞うといった行為は内容にもよるがこれらの条件を満たさないとされる可能性が高い。実際に炎上、社会的に問題視されたケースばかりであり、本人の意思はともかく客観的に見れば極めて私的な利益を目的としている行為に思われる。それぞれ「自分が大学院に進むことで政治に興味をもってもらいたい」「ドミノで夢を与えたい」「写真集で元気になって欲しい」といったエクスキューズをつけたとしても、公益性を満たすかといえば難しいだろう。これらの炎上例は「こじき罪」にあたる可能性があったとされる事案であり、問題をクリアできずに本人撤回となった案件もある。

 また少し古いケースだが、2017年に出産費用をクラファンで募った大学生も問題視された。本人にそのつもりはなかったのだろうが、やはり法的には「自分の利益」にあたり、「公益性」が低い点では解釈としては「こじき罪」がちらつく。ただ継続性はなく繰り返されないワンプロジェクトという点では「グレー」という意見だった。それでも「利己的」とネット民を中心に批判されたようだ。

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