国内

そのクラウドファンディングは「ネット乞食」か 軽犯罪法「こじき罪」から考察してみた

そのクラウドファンディングに公益性はあるのかと議論になった少年革命家を名乗る「ゆたぽん」(クラウドファンディング募集ページより)

そのクラウドファンディングに公益性はあるのかと議論になった少年革命家を名乗る「ゆたぽん」(クラウドファンディング募集ページより)

 ホームページやSNSで、自分からは何も提供せずにカンパやプレゼントを呼びかける行為は「ネット乞食」としてインターネットでは長らく嫌われてきた。ところが最近では「笑顔、元気と勇気を届けたい」という、子供向け物語のヒーローか、何かの日本代表なのかというような、ふんわりした目的とリターン(見返り)を用意するだけで資金提供を求めるケースが増えている。俳人で著作家の日野百草氏が、ネット有名人によるクラウドファンディングをめぐる「ネット乞食」論争について考えた。

 * * *
 この国で「こじき」(乞食)をすることは犯罪である。

〈こじきをし、又はこじきをさせた者
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
(軽犯罪法第一条第二十二号)〉

 いわゆる「こじき罪」というやつである。ここでいう「こじき」とは、不特定の人に憐れみを乞い、自身もしくは自身が扶助する者のために金品を乞うことである。自分の生活のために乞食を繰り返す(常習性も加味されるだろう)、自分の子どもに乞食をさせるなどの行為は「こじき罪」として軽犯罪法違反となる。とくに後者の場合は児童福祉法にも抵触するため罪が重くなる。

一 身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
二 児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為
三 公衆の娯楽を目的として、満十五歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
(児童福祉法第三十四条)

 昭和二十二年の古い法律のままなので「かるわざ又は曲馬をさせる」などという文言もある。古くは「角兵衛獅子」という子どもを使った大道芸があり、貧しい家の子どもを買ってきては芸を仕込んで稼ぐ時代があったし、サーカスや見世物小屋もそうだった。そこまで古くなくとも「子どもと動物の憐れみは売れる」は古く映画興行の基本でもあった。それにしても「こじき罪」というパワーワード、まさに昭和である。

 しかし、この令和にも「こじき罪」は存在する。近年やり玉に上がるのはインターネットによる新しい物乞い(不特定多数に物を乞う本来の意)だろうか。たとえば不特定多数から金品を募る「クラウドファンディング」(以下、クラファン)や動画コンテンツの「投げ銭」、個人アカウントの「欲しいものリスト」はどうなのかという問題は、これまでも物議を醸してきた。スラングでは「ネット乞食」とも呼ばれる。

 もちろんクラファンも本来は社会実現のため、もしくは優先的なリターン前提の物作りのためという意義のある素晴らしいシステムである。使い方さえ間違わなければ何も問題がない、それどころか時代を変えるシステムという可能性を秘めている。たとえば法隆寺などの貴重な文化財の修繕や引退競走馬のセカンドキャリアなど、多くのクラファンは何ら問題ない。「こじき罪」にはあたらない。本当に素晴らしいと思う。筆者も少額ながら個人的に支援したこともある。

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン