痔が招くうつ病
日本大腸肛門病学会名誉会員で大腸肛門病センター高野病院の高野正博会長は、痔がさらなる危険を招きかねないと指摘する。
「高齢になると、肛門や直腸の組織が緩んできます。便秘の状態で強くいきむと、肛門の内側のいぼ痔が肛門の外に出てきたり、肛門そのものが裏返しになって外に出てしまったりする『脱肛』が起きやすくなるのです」
脱肛は、排便時以外も人を苦しめる。
「肛門の外に出てきた粘膜が炎症を起こして、粘膜が破れて出血するケースもあります」(高野氏)
椅子に座るだけでも痛くなり、長時間の移動も億劫に。いつ出血するかとひやひやし、外出やスポーツも楽しめなくなってしまう。すると、家に閉じこもりがちになり、「ひいてはうつに繋がってしまう可能性もある」と白畑氏は指摘する。
痔の治療法について、高野氏が解説する。
「大切なのは自分で治そうとせず、恥ずかしがらずに医師に相談することです。切れ痔の場合は便を軟らかくする薬を使えば、原因となる便秘を改善できる。内部にできたいぼ痔は注射で小さくする治療法があります。そうすれば、肛門の外に出る脱肛も回避できます」
しかし、脱肛と思ってもそうでないケースもあると高野氏が続ける。
「脱肛か、直腸が外に出てしまっている(のか直腸脱、直腸粘膜脱)で治療法が異なりますので、それを診断できる専門病院で診察を受けてください」
白畑氏もこう話す。
「痔の治療というと、一昔前は入院が必要で手術も痛く、術後もお尻の不調が続くというイメージがあったため、痔に詳しい方ほど、治療をためらいます。でも今は違う。10分ほどの日帰り手術も可能です」
特にいぼ痔の手術では、患部に続く動脈を根元で縛る「結紮切除法」が主流となり、手術時間は10分ほどで傷はごく僅か、術後の痛みも少ない。