公契約関係競売入札妨害罪に該当する可能性も
入札説明書
さらに、この入札が法律的にも重大な問題があることがわかった。記事配信後、法律の専門家から次のような指摘を受けた。元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が指摘する。
「ポストの書いた、安倍国葬儀の入札の疑惑に関心を持ち、私も検証しようと思っています。この問題は、発注側が特定の事業者に発注するために入札の条件を不当に歪めたのではないかという問題です。特定な相手を有利にし、かつ特定の相手を不利にする条件を設定し、特定の事業者に発注できるようにしたのではないかという疑いです。
これと似た案件として2014年に大阪地検特捜部が手掛けた国立循環器病研究センターの情報システム管理業務をめぐる不正入札事件があります。発注側の同センターの部長と受注したシステム会社の社長がいわゆる官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害罪の容疑で逮捕、起訴された。
裁判で争われたのが、発注条件の設定の仕方でした。特定者を有利にし、特定者を不利にする入札条件が不可欠だったかどうかという部分ですが、大阪地裁が2018年に有罪判決を出し、控訴審の大阪高裁も2019年に有罪判決を下して確定した。これにより、判例が出来ました。
これを今回の国葬儀の入札に照らすと、受注の条件として内閣府が設定した、5年以内に皇族・総理・議長・最高裁長官参加のイベントを行なった実績というのが、果して国葬儀の入札条件として『不可欠』であるかどうかです。
不可欠性が欠ける、不十分であるとしたら、『偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為』があったとし公契約関係競売入札妨害罪に該当する可能性が生じ、官製談合防止法にも抵触する可能性が生じるということです。その判例があるからです。今回の記事の指摘は、法的にはここがポイントになります」
安倍氏の国葬入札につけられた「過去5年以内に国家的な式典の企画・演出、警備を行なった実績」が本当に必要だったのか。それを判断する上で、重要な証言がある。国葬入札(9月2日)の2日後、岸田文雄・首相自身が新潟での会見で国葬の業者選定についてこう語っていることだ。
「武道館でこうした事業を担うことができる業者というのは、4社ほどに限られているということも聞いている中で、今回入札が行なわれた。そして結果としてこの会社が落札したということであります」
政府側に国葬の企画演出をできる企業が「4社」あるという認識があったにもかかわらず、「5年以内の実績」という条件を加えたことでムラヤマ1社しか参加できなかった。だとすれば、この入札条件は「不可欠な条件」とは言えないのではないか。政府ぐるみの「官製談合」だった疑いがますます濃くなったのである。