『呪怨』

清水さんが脚本・監督を務めた映画『呪怨 劇場版』(2002年)。出演者は奥菜恵(43才)、伊東美咲(45才)など。2004年に『THE JUON/呪怨』としてリメイク版も公開に。こちらは『スパイダーマン』シリーズの監督で知られるサム・ライミがプロデュースを担当。清水さんがメガホンをとった(『呪怨 劇場版』Blue-ray:2750円。発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント)

人間の“発想”に勝る“恐怖”はない!

 怖さを表現するために、清水さんは、技術に頼りすぎるのはよくないと考えている。

「確かに映画の技術は進み、VFXを使って生身の人間だけでは不可能な映像も作れるようになりました。

 でも、それってすぐに飽きるんです。いまの子供たちは、何かにつけて『これCGでしょ?』と見破りますし、『どうやって作ったんだろう?』という興味は持たず、そのままスルーしてしまう。ぼく自身も『所詮、CGでしょ』と思った時点で冷めてしまうことがあって、それだけでは怖くないし、感情や想像に訴えられる要素がもったいなく、つまらないんです。

 大事なのは、人間の感情を伴った空気感と感覚。それには、先ほどお話ししたような、子供の頃に恐怖を覚えたあの感覚がとても大切で、それをどこまで映像に落とし込めるかが重要だと思っています」

 その例として、映画『リング』で、貞子がテレビから出てくるシーンについて清水さんはこう語る。

「あれは、原作にはなく映画の脚本を書いた高橋洋さんの幼少期の実体験から生まれたシーンです。

 昼間、幼少期の高橋さんが留守番中にたまたま家のテレビで見た洋画に幽霊が出てきて、“とんでもないものを見てしまった”と。それが怖くて、しばらくテレビに近づけなくなった事があったらしいんです。でも、それが何て映画だったか? どんな描写だったか?までは憶えていない……。

『恐らく、自分はTVからはみ出てきた幽霊を見たんだ‥‥』という、そんな体験と妄想からあの『リング』のシーンは生まれたらしいのです。CG や合成を使うことはあったとしても、人間の発想と感覚にかなうものはないと思いますね」

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