来季高卒5年目を迎える強肩の小幡竜平(時事通信フォト)
1985年の「岡田・平田」の二遊間
就任早々、岡田監督は遊撃の中野拓夢の二塁コンバート案を示唆した。来季3年目を迎える中野は1年目からレギュラーを奪い、今季は135試合ショートで先発出場した。しかし、2年連続でリーグ最多失策を喫している。
「守備機会の多いショートにエラーは付きものですが、岡田監督は『中野はショート向きではない』と考えたのかもしれません。ショートには、来季高卒5年目を迎える強肩の小幡竜平を据えることを考えているようです。
どの監督もセンターラインが大事とは言いますが、現役時代にセカンドを守っていた岡田監督は頻繁に二遊間が変わると併殺打を取りづらくなり、無駄な失点に繋がるとよく知っている。同じ選手を固定して使えば、試合ごとにコンビネーションが良くなっていき、勝ちを拾えるようになる。阪神はエラー数で5年連続リーグ最多ですが、岡田監督は取れるアウトを確実に取る野球を徹底するため、二遊間を固定する意向なのでしょう」
日本一になった1985年、阪神は真弓明信、ランディ・バース、掛布雅之、岡田彰布の4人が30発以上を放ち、猛虎打線が他球団を圧倒した。それも確かな事実だが、守備もしっかりしていた。キャッチャーの木戸克彦に加え、内野ではセカンドの岡田彰布、ショートの平田勝男、サードの掛布雅之がゴールデングラブ賞を獲得。エラー数もリーグ2番目に少ない78だった。
「現役時代、華麗な守備から“牛若丸”と呼ばれた吉田義男監督は前年の後半、故障もあってライトを守っていた岡田をセカンドに戻して、同じポジションで1年間使い続けた。常時出場していた平田と岡田には“阿吽の呼吸”があったから、取るべきゲッツーを確実に取れた。1年を通して守備陣を固定したことも、1985年日本一の理由の1つでしょう。守りがチーム防御率4.16(リーグ4位)の投手陣をカバーした。
二遊間は外野からの返球でどちらがカットマンに入るかなどの数字に現れない連携プレーもある。岡田監督はその重要性を身に染みて感じている。二遊間を固定できれば、来季の阪神はかなり期待できるのではないでしょうか」
岡田監督は1次政権の時もショートにルーキーの鳥谷を抜擢して成長させ、2007年のオフにはオリックスから守備の優れたセカンドである平野恵一を獲得。二遊間を強化することでチーム力を向上させた。今回もまず、二遊間に注目している。キャンプ、オープン戦を通じてショート・小幡、セカンド・中野は「固定して使いたい」と思わせることができるか。それとも、他の選手が奮起するか。来季18年ぶりの“アレ”を掴むための、阪神の戦いはもう始まっている。