温水洗浄便座が「便失禁」を起こすメカニズム
「健康体」でも漏れる
なぜ温水洗浄便座の使用が便失禁をもたらすと考えられるのか。角田医師が解説する。
「加齢で肛門の締まりが悪くなった人が温水洗浄便座を使用すると、温水が肛門から直腸に入りやすくなります。それによって浣腸効果が生じ、直腸内の便の排出が促される。その一方で、出し切ったつもりの便と水の一部が直腸内に残る場合がある。するとトイレを済ませた後、しばらく歩くうちに水と便が混じって降りてきて、便失禁が起こってしまうのです」
いざ便失禁が起きても、自分ではその原因を突き止めにくく、「気づいたら下着が汚れていた」といったケースが多いという。
また年齢や肛門の状態に限らず注意が必要だという指摘もある。
「肛門の締まりを調節する肛門括約筋の機能が低下している人ほど便失禁が起きやすい傾向にありますが、それほど衰えていないのにトイレをした後にちょっと便がにじみ出るという患者さんがいます。
そうした人は温水洗浄便座の影響が疑われ、実際に利用を控えるように指導すると便失禁が改善されるケースがあります」(柴北院長)
さらに温水洗浄便座の使用には、「便失禁以外のリスク」も潜んでいる。柴北院長が続ける。
「洗いすぎによって保護に必要な皮脂まで流され、皮膚が荒れて慢性的な炎症を起こしたり、切れ痔になったりする場合があります。そのため一部の専門医の間では『過度の使用によってマイナス効果も生まれているのでは』という議論が起き始めている」
清潔な排便をサポートするはずの“利器”が逆効果をもたらしているという指摘である。