「弱」設定で5秒以内
しかしながら、温水洗浄便座は生活に欠かせないモノであり、引き続き使い続けたいという人も多いはずだ。角田医師も「便失禁との関連を指摘しただけであって、正しく利用すれば問題はありません」と言う。では清潔かつ便失禁を防ぐにはどのように使用すれば良いのか。
「便秘の患者さんに多いのですが、排便前に浣腸効果を狙って刺激を与える目的で利用し、さらに排便後に再使用する方がいらっしゃいます。長い時間洗うほど直腸に水が入りやすくなるので、推奨できない使用法です。
肛門を洗う際には“噴射させるポイント”と“強度”に注意しましょう。排便後、肛門の内側になるべく温水を入れないよう意識して、外側にあてる感覚でチョロチョロと洗ってサッとふき取る。強さも一番弱い水圧で5秒以内に抑える。それだけでも十分に肛門を清潔に保つことができます」(角田医師)
今回報告された論文では「1日2回以上の使用」が便失禁につながると指摘されていた。回数が増えるほどリスクも上がるため、排便の回数を適切にコントロールすることが重要になる。角田医師が語る。
「1日に何度もトイレに行ってしまうような人は慢性的な下痢などの症状を抱えている場合が多い。そうした人は便の状態を改善するべく、食生活の改善や必要に応じて下痢止めなどによる投薬治療をしましょう。適切な頻度の排便につながると期待できます。
また生活習慣を変えて、そもそも便失禁が起きにくい体づくりをすることもポイントです。便に不安がある人は現代人に不足しがちな食物繊維を摂ることを意識して穀米や玄米などを試してほしい。食物繊維は野菜にも多く含まれますが、キャベツやレタスなどの葉物野菜より、ゴボウやニンジン、レンコンなど噛み応えのある根菜類を食べるほうが効率的です」
そのほか男性ではアルコールの大量飲酒が排便回数の過多や便失禁につながっているケースが多いという。
便失禁のようなシモの悩みは人に言えずに放置してしまいがちだ。少しでも身体に異変が見られたら1人で悩まず、勇気を出して医師に相談することが望ましい。
※週刊ポスト2022年11月18・25日号