筆者は自由民主党京都府支部連合会(以下・京都府連)が国政選挙の度に、“マネロン(マネーロンダリング)”選挙買収に手を染めてきた問題を取材してきた。このマネロン選挙買収のスキームは、「引継書」という京都府連の内部文書によって明らかになったものだ。そのスキームは次のようなものとなる。
京都府連では国政選挙の前に候補者がまとまった金を用意して府連に献金し、自民党府連を通じて府議・市議に各50万円を配るという形で行われていた。候補者が直接50万円を地方議員に手渡せば公職選挙法上の「選挙買収」になってしまうので、政治団体を隠れ蓑とし、候補者からの金を一度京都府連に入れ、迂回させる形(マネロン)をとることで選挙買収の実態を覆い隠そうとするものがマネロン選挙買収の仕組みである。
11月30日に公開された令和3年分の政治資金収支報告書でも、昨年の衆議院選挙前(10 月31日投開票)で候補者が支部長を務める選挙区支部などから2650万円が府連に献金され、10月上旬に一人50万円(計2650万円)のカネが53人の府議・市議・元市議選候補者らの議員支部および政治団体にばら撒かれていることが確認された。
京都府連は「マネロン選挙買収」ではないかという指摘に対して、配った50万円は「党の政策広報・党勢拡大の為の活動費」との主張を繰り返してきた。
そこで注目されたのが各地方議員・政治団体の支出に「党の政策広報・党勢拡大の為の活動費」が本当にあるのか、だ。山集市議の政治団体「やまずまい子後援会」の収支報告書を確認すると総選挙前に京都府連から50万円を受け取っているのに、支出0円なのだ。この事実は山集市議が「党の政策広報・党勢拡大の為の活動」をしておらず、50万円をそのまま懐に入れたことを示す。上脇博之・神戸学院大学教授(憲法学)が語る。
「候補者は地方議員を買収すれば票になる。そうした相互関係のなかで、京都府連は毎回、選挙のタイミングで金銭配布を行っていたのでしょう。府連は候補者を当選させる目的でお金を渡しており、このスキームは明らかに『買収』。公選法221条1項が該当し、買収の罰則は『三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する』となる。山集市議のケースは、京都府連が主張している“表向きの理由”の辻褄が合わないことを証明しているといえます」
京都府連から寄付された50万円について、山集市議は書面でこう回答した。
「令和3年度は収支報告の通りであります。然るべき時に党勢拡大や政策広報に活用予定です」
京都では、政治とカネにまつわるトラブルが次々と出てきている。
取材・文/赤石晋一郎(ジャーナリスト)
【プロフィール】
赤石晋一郎(あかいし・しんいちろう)/「FRIDAY」「週刊文春」記者を経て2019年よりフリーに。近著に『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)。『元文春記者チャンネル』をYouTubeにて配信中。