国内

「AV新法」の皮肉 悪質な業者に出演希望女性がみずから集まってしまう構図に

2022年06月14日、参院内閣委員会でアダルトビデオ(AV)出演被害を防ぐための法案が可決され、立憲民主党の塩村文夏氏(右)と言葉を交わす自民党の上川陽子幹事長代理(時事通信フォト)

2022年06月14日、参院内閣委員会でアダルトビデオ(AV)出演被害を防ぐための法案が可決され、立憲民主党の塩村文夏氏(右)と言葉を交わす自民党の上川陽子幹事長代理(時事通信フォト)

 2022年4月1日から、成年年齢が18歳に引き下げられた。それに伴い、18歳になれば親の承諾なしに一人で契約をすることができるようになり、投資詐欺の被害とともに懸念されたのが、出演強要被害の広がりだ。それを防ぐ目的もあって短期間で成立したAV出演被害防止・救済法だが、かえって事態をややこしくする現象が起きている。ライターの宮添優氏が、出演者の権利をまもるための義務によってかえって、被害を防ぐどころか地下に潜らせつつある現実についてレポートする。

 * * *
 2022年6月に施行されたAV出演被害防止・救済法違反、いわゆる「AV新法」違反の疑いによって、初めて摘発者が出たと大手紙、テレビなどが相次いで報じた。摘発された男・Xはすでに、モザイクなどがない成人向けの映像作品、いわゆる「裏ビデオ」を配信したわいせつ電磁的記録陳列の疑いで逮捕、起訴されていたが、この「新法」により出演した女性に契約書の交付をしなかったとして再逮捕された。全国紙社会部記者が解説する。

「男は、元々一般的なイメージビデオなどの制作に携わっていましたが、動画サイトFC2を通じて”同人AV”と呼ばれる映像を販売しており、業界内では知る人ぞ知る存在だったようです。モデルに契約書を提示しなかった、という新法で定められた義務に違反した容疑で今回逮捕されました。逮捕に至った事例の他にも、説明なくネットで映像を流されたという被害者は数十人に及ぶと言われています。自分の映像がまさかネット上で、しかもモザイクなしで販売されているとは知らなかったと、複数の女性が被害を訴えています」(全国紙社会部記者)

 同好の士がみずから資金を出して執筆と編集をし発行、頒布する同人誌の略称「同人」を形容詞のようにつけているように、同人AVとは、既存の業界の枠組みではない形での発表を望んだ人たちによって制作、発表されている、インディーズ作品とも言えるものだ。すべてが無修正や海賊版というわけではなく、知的財産振興協会(IPPA)による承認を受けた作品もある。その一方で、著作権や出演者の権利を軽んじ違法な映像や写真、創造物を制作し、ばらまくような人たちも一定数存在する。今回、二度目の逮捕となったXは、自分の利益以外の権利を軽視する側だったようだ。

「契約書を交わしてと言われても嫌です」

 だからなのか、新法で義務づけられた出演女性に対する契約書も用意していなかったのかもしれない。しかし、無修正だと知らされていたら出演しなかったという被害者の声がある一方で、Xが過去に販売した映像に出演した女性には、被害を訴えるつもりがない人たちも少なくない。その理由について、Xに撮影されたことがあるという、神奈川県内にある風俗店に勤務する女性(20代)が本音を語る。

「出演作がどういうものかXから説明はあったし、同意の上で撮影してもらいました、ギャラは10万ちょっと。だいたい半日拘束で、撮影した映像はネットを通じて販売すると口頭で説明も受けました。顔が出てるから心配ではないか、と知人からも言われますけど……。正直その辺はどうでもよくて、仕事が暇だったり、お金が必要な時に撮ってもらっていた感じ。最初は不安だったけど、メイクや髪型を変えれば、よほどのことがない限りバレないし、コロナでマスク生活が当たり前だから、街を歩いていてジロジロ見られたりすることもないです。正直、割りのいいバイト。契約書なんて交わさないし、交わしてと言われても嫌です。本名も年齢も、Xには明かしていないんです」(Xのビデオに出演した女性)

 実はこの女性、権利への配慮が行き届いた、俗に「表」と呼ばれる複数の作品にも出演歴がある。それなのに条件が悪い同人モノに出演するのは不可解にも思えるが、彼女に言わせれば、不思議ではない背景があるのだという。

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
1泊2日の日程で石川県七尾市と志賀町をご訪問(2025年5月19日、撮影/JMPA)
《1泊2日で石川県へ》愛子さま、被災地ご訪問はパンツルック 「ホワイト」と「ブラック」の使い分けで見せた2つの大人コーデ
NEWSポストセブン
男が立てこもっていたアパート
《船橋立てこもり》「長い髪に無精ヒゲの男が…」事件現場アパートに住む住人が語った“緊迫の瞬間”「すぐ家から出て!」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
江夏豊氏が認める歴代阪神の名投手は誰か
江夏豊氏が選出する「歴代阪神の名投手10人」 レジェンドから個性派まで…甲子園のヤジに潰されなかった“なにくそという気概”を持った男たち
週刊ポスト
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン