渡辺達生氏が撮影した三遊亭円楽さんの寿影

渡辺達生氏が撮影した三遊亭円楽さんの寿影

●女子アナの「勝ち組」と「負け組」を的確に表現した(2000年10月8日放送回)

(問題)多くの名勝負が繰り広げられたシドニーオリンピック。さまざまなケースの「勝ち組」「負け組」を考えてください。

「女子アナウンサーの場合。勝ち組はプロ野球選手と結婚する。負け組は、プロ野球選手と不倫する」

(補足)「女子アナ」という職業の一面(本質?)を見事に言い表している。あくまでシャレだが、何でも批判されてしまう現在では許されないネタかもしれない。同じ問題に対する答で、山田君をネタにした「アイドル歌手の場合。負け組はいつの間にかいなくなる。勝ち組は座布団を配って生き残る」も秀逸(山田君から座布団を2枚贈られた)。

●嫌味なセリフで笑わせるのが腹黒キャラの真骨頂(2000年12月24日放送回)

(問題)「笑点自分史」ときましょう。テーマは自分、著者も自分。一節をちょっとだけ読み上げてください。私が「苦労したねえ」と言いますので、ひと言。

「学生時代、それほど成績が良くなかった私は、落語界に入って大丈夫だろうかと悩んだ」
「苦労したねえ」
「今、ここに座っていると優越感を感じる」

(補足)たしかに本音かもしれないが、ある意味「言ってはいけないひと言」である。鼻持ちならない嫌味なセリフで会場や視聴者を大笑いさせてしまうのは、腹黒キャラの真骨頂と言えるだろう。腹黒キャラや毒舌を駆使して、人間の持つ“業”を巧みに表現してくれた功績は大きい。

──『笑点』の大喜利メンバーを45年にわたって務めた円楽さんは、2000年の一年間だけでも、こんなにも豊かで多彩な毒舌を放ってくれました。昨今は言葉尻を捉えた批判に精を出す人が増殖して、世の中は窮屈になるいっぽうです。人を傷つける言葉は論外ですが、過剰な遠慮や気づかいがまん延したところで誰も幸せにはなりません。

 ただ、先日の「M-1グランプリ2022」では、みんながうっすら感じている本音をネタにした「ウエストランド」が優勝するなど、そんな風潮への反動も出始めています。もうすぐ新しい年を迎える私たちも、円楽さんの腹黒スピリッツを受け継いで、2023年はもっと自分に正直に生きてみましょう。いや、本音をどこまで口にするかはまた別の話として。

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