ビジネス

アサヒビールが首位を奪還か 外食盛況でスーパードライ回復、キリンは元社長急逝と値上げが逆風に

アサヒビールがシェアトップを獲得した模様(時事通信フォト)

アサヒビールがシェアトップを獲得した模様(時事通信フォト)

 コロナ禍で低迷していた外食・飲食市場がやや賑わいを取り戻し、アルコールの消費が回復してきた。そんな中、ビール類のシェア争いに大きな変化が起きているとみられることがわかった。ビール業界に詳しいジャーナリストの永井隆氏がリポートする。

 * * *
 2022年のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)メーカー別の販売シェア(市場占有率)で、トップメーカーが入れ替わったとみられる。取材を基に独自で集計すると、2021年通期で2位だったアサヒビールが36.5%を獲得。同首位だったキリンビールの35.7%を抜き、0.8ポイントの僅差ながら2019年以来3年ぶりに首位に返り咲いたようだ。

 なぜ“推計値”になるかといえば、アサヒが2020年から販売数量の公表をやめてしまったから。理由は「過度なシェア競争を避けるため」(アサヒ)として、ビール「スーパードライ」など主要3品目だけ販売数量を明らかにしている。

 これに対し、キリン、サントリー、サッポロビールの3社は引き続き、販売数量を公表し続けている。

 アサヒも公表していた2019年の4社合計販売数量は3億8458万箱(1箱は大瓶20本換算=12.66リットル)。この数字から、4社が示した「前年比」などから、2022年の4社合計の販売数量を導くと前年比2.5%増の3億3914万箱となる。ビール類市場が前年を上回ったのは実に18年ぶり。

 このうちキリンは前年比2.5%減の1億2100万箱でシェアは35.7%(2021年は37.5%)、サントリーは同5.3%増でシェア16.2%(同15.8%)、サッポロは同3.2%増でシェア11.6%(同11.5%)。アサヒは4社合計からアサヒを除く3社を引いた同6.2%増の1億2382万箱と推計され、シェアは36.5%(同35.2%)。

 もっとも、4社合計の2022年総市場の前年比について、アサヒは「3%増」としているのに対し、サッポロは「2%強増」、キリンとサントリーは「2%増」と分析が分かれている。こうしたなか、入手した複数のデータを元に、筆者は「2.5%増」とした。なお、2%増でシェアを計算するとアサヒ36.2%に対しキリン35.9%で、0.3%差と“併走”状態となる。

 昨年18年ぶりに市場が対前年でプラスに転じたのは、コロナ禍で低迷していた飲食店向けの業務用需要がやや回復したことが大きい。業務用は発泡酒や第3のビールは少なく、大半がビールだ。しかも、2020年に減税されたビールは家庭用でも需要が膨らみ、サッポロによれば4社合計のビールは前年より14%も伸びた。ビールと業務用に強いアサヒには追い風となった。

 一方、4社で唯一前年を割ったキリンは、家庭用と第3のビールに強く、昨秋の家庭用ビール類の値上げが逆風となった。さらに、2020年の11年ぶり首位奪還の立役者だった布施孝之元社長が2021年9月に急逝したこと。加えて、ちょうどミャンマー事業の整理作業と急逝がたまたま重なり、グループ内の主要人事を迅速に実行できなかったことも、キリンにとっては不運だった。

 2023年は10月にビールが減税される一方、第3のビールは増税されて発泡酒と税額は同じになる。同時に「いわゆる第3のビールは、定義上は発泡酒になる」(財務省)形だ。最終的には2026年10月、3種類の税額は350ミリリットルあたり54.25円で統一される(ビールは下がり発泡酒と第3のビールは上がる)。

「(ビール類のなかで)ビールを中心に今年は戦う」(野瀬裕之サッポロビール社長)のは、4社とも共通する。ただし、第3のビールが増税されるため、2023年の市場は「3%~4%減少する」と各社は予想する。

関連記事

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン