次は恵方巻(イメージ)

次は恵方巻き(イメージ)

もったいないなんて言ってるうちは幸せ

 季節の豊かな日本ならではというか、2月3日には恵方巻が待ち構えている。これこそ日本の元祖フードロス問題の筆頭、知り合いのコンビニオーナーも「恵方巻なんか見たくもない」と本音を漏らしていた。ここでは本旨ではないため触れるに留めるが、とくにコンビニは本部による大量仕入れの尻拭い同然に自爆営業(オーナーや店員が買わされる)が毎年問題となっている。もちろん、店主や店員が毎日恵方巻を食べ続けるわけにもいかないので廃棄となる。

「それに恵方巻って騒ぐほどには売れないんですよ。もう、なんでやってるのかわかりません。それでもやらないわけにもいかないし、並べないわけにもいかないんでしょうね」

 前述のG20サミットで議長国だったにも関わらず国際的に謎(日本人にとっても謎か)の「恵方巻」と大量廃棄、さすがに政府もおかんむりで毎年、農林水産省は「恵方巻きのロス削減」と名指しで問題視、恵方巻きのロス削減に取り組む食品小売事業者を募集し公表している。家畜の飼料にする取り組みの他、「予約販売の拡大」「アイテム数(恵方巻きの種類)減」「売上状況による店舗間調整」などで成果は上がっているとされるが、恵方巻そのものをやめる気配は皆無である。コンビニに至ってはいまだにアルバイトの店員に買わせているフランチャイズが存在する。スーパーなどは自店舗調理などである程度は調整できても、ただ仕入れるだけのコンビニは調整が難しいのもあるが、いまだに恵方巻に関して何らかのペナルティを課している本部もあるとされる。ちなみに「家畜に食わせればいい」というのも素人考えで、食用となると良質な飼料が必要となるため、恵方巻を飼料にしたからといって多くの畜産農家が使うとは限らない。いまでも大方は「廃棄」が現実だ。

「でもね、もったいないなんて言ってるうちは幸せなんですよ、言い方が悪いかもしれませんがね。今年(2023年)は原材料の高騰がもっと深刻になります。いますぐでないにせよ、いずれは『あんなに捨ててたのに』なんてなりかねませんよ」

 現場にいて、日々廃棄している身だからこその実感だろう。日本の食料自給率はカロリーベースで38%、生産額ベースでも63%で、前者は1%増だったが後者は前年比で4%減ってしまった(2021年度)。政府目標の45%には到底及ばず、このままでは欧米や中国はもちろん、東南アジアや南米にも買い負けたまま、いずれ飽食日本の終焉をみるかもしれない。

 大量生産、大量加工、大量販売、大量消費、大量廃棄というこの負のサイクルを、せめてクリスマスのケーキだ、正月のおせちだ、節分の恵方巻だの季節もの(「行事食」)だけでも変えて行かなければならないのだろう。企業倫理はもちろん、国民の意識の問題として。

 食もまた国防。このフードロスもまた、環境問題だけでなく、この国の食料安全保障を脅かしている負のサイクルである。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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