1ホールのクリスマスケーキは転用がきかない(イメージ)

1ホールのクリスマスケーキは転用がきかない(イメージ)

 かつて2010年ごろ、アメリカのグルーポンという共同クーポン購入サイトが日本に上陸した際、とある店舗のおせち半額クーポン券を共同購入した500人にとんでもなく粗雑で広告写真とは似ても似つかない「おせちのようなもの」が届けられて問題となった。ネットでは「スカスカおせち」と呼ばれていたと記憶するが、なぜか8Pチーズ(6Pチーズとも)が入っていたり、店内でおせちを作る若者たちの不衛生な現場とピース写真なども流出したりで当時ネットでも話題となった。のちに当該店は食品衛生法と景品表示法で立ち入り調査および事情聴取を受けた。ちなみにグルーポンは2020年に日本から撤退、日本法人のグルーポン・ジャパンも2021年に解散している。

「私もその事件は知っています。あれは極端ですけど、おせちがお祝いとして価格を高く設定できて、原価率が低いので儲かることは確かです」

 もちろん筆者はそれ自体、構わないと思う。それでも買う消費者がいるならそれが市場価格という考え方もある。問題は、その原価率の低さ頼みの膨大な売れ残り、いわゆる「フードロス」(食品ロス)だ。

「フードロス、おせちに限りませんが難しい問題なんです。具材にもよりますが、おせちはもともと保存食ですからそれなりに日持ちはしますけど、まあ正月過ぎて食べる人は少数です。それにおせちセットだと夏ごろには業者は具材とか、いろいろ発注済みですからね。完全受注ならともかく、とくに店頭売りの場合はロスも含めて数仕入れます。それに単品だって、こうして半額で見切ってますけど、栗きんとんなんかこんなに大量に年中食べないですよね。でも売り場に色をつける(華やかにする)場合はこうしてロス分も込みで揃えるしかないんです」

 栗きんとんが大好物な方には申し訳ないが、確かに他の単品おせちにくらべて栗きんとんの売れ残りっぷりが目につく。それに半額とはいえ500円以上する栗きんとん、正月も過ぎた日常、同じ値段なら若鶏300グラムとかロースカツ弁当でも買ったほうがいいだろうし、パンや菓子類なら500円もあれば複数買える。おせち向けの特別な栗きんとん、あくまで年に一度のお祝いだから買う商品だ。

「クリスマスケーキと同じってことです。これも取材に来ていただいたからわかると思うんですけど、ローストチキンとかオードブルなんて普段のおかずに食べられるから半額とかにすれば売れるんですけど、ケーキはねえ……」

 クリスマス用のローストチキンやオードブルは半額にすれば売り切れると話す。実際、当日取材をしてみたが半額シールの貼られる閉店1時間前、夜9時になると男性買い物客を中心に買い込む姿があった。普段のおかずにも十分だろう。しかしケーキ、それもホールで、となると難しい。

「うちはホールケーキも予約制ですけど、店頭である程度仕入れて売るとなると半額にしても売り切れるか、難しいですね」

 これも地域や店にもよるのだろうが、半額だからとホールタイプのケーキを何個も買い込む客というのも限られるだろう。ましてクリスマスが過ぎればすぐお正月、冒頭の新年っぽい「ぱーっと華やかな感じ」を出すためには過去の「ぱーっと華やかな感じ」なクリスマスディスプレイは即片付けなければならない。

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