世界的な燃料費や原材料の急騰による値上げラッシュはとどまるところを知らず、2月も5000品目以上の食品で、値上げが相次いでいる。だがピンチなのは家計だけではない。日本の食そのものが危機的状況に陥っている──私たちの食卓の現在、そして未来について一般社団法人「全国農業協同組合中央会(JA全中)」代表理事会長の中家徹さんに聞いた。
世界的低水準の「食料自給率」が値上げの一因になっている
夕食の献立を考えるとき、あるいはスーパーで買い物をするとき、または外食をするとき、あなたは「何を基準に」食べるものを選んでいるだろうか。中家さんが私たちをとりまく「食」についてこう語る。
「私たちがいま食べているものの6割は、輸入に頼っているものです。日本の食料自給率(カロリーベース)はたった38%で、先進国では最低水準。田畑の肥料や家畜の飼料、燃料なども輸入に頼っているため、ウクライナ侵攻による世界的な値上げや品不足の影響を強く受けています。
加えて、今後は人口増による世界的な食料不足も懸念されています。世界の人口は80億人を超え、飢餓人口は8億2800万人ともいわれています。大雨、熱波、猛暑や干ばつなどの異常気象が世界各地で発生し、食料の生産に被害が出ており、日本でも自然災害により農作物に甚大な被害を受けるケースが増えています。
例えば1時間の降水量80mm以上の強い雨が降る回数も、統計が始まった1981年からの10年間に比べて、直近10年間では約1.6倍になりました。将来的にはもっと人口が増えて、世界規模で食料の争奪戦が起きる可能性があるのです」(中家さん・以下同)
低い自給率と、決して想定外ではなくなっている食糧難に加え、国産農畜産物の需要が減少している。
「日本は古来、瑞穂の国。米を中心とした和食が日本の伝統文化ですが、最近は食の欧米化・多様化に伴い、米食が縮小しています。米の消費量は毎年10万tずつ減っており、この60年で半分以下になってしまいました。ただでさえ食料自給率が低い中で、貿易の自由化で輸入も格段に増えています。日本が輸出する農林水産物・食品の輸出額(2022年)は1.4兆円超ですが、輸入額は約13兆円。10倍近くもあるのです」