JA全中会長・中家徹氏
昨今はスーパーで、ブロッコリーや玉ねぎ、オクラ、かぼちゃなど外国産の野菜をよく目にするようになった。旬を問わずいつでも安く手に入る野菜は魅力的だが、消費者が「より安いもの」を求めていくことで、日本の農産物が窮地に立たされている。
「消費者が国産の農畜産物を求めなくなれば需要と供給のバランスが崩れ、価格が下がります。肥料や燃料が高騰し生産コストが高止まりして経営が苦しくなっても農家はメーカーのように自由な価格設定が難しいため、私たちは再生可能な適切な価格形成の仕組みを国に求めています。極めて困難な環境の中、高齢化と後継者の不足も影響し年々農家は減少しています」
1980年に413万人いた農業従事者は、2000年には240万人、2020年には136万人と3分の1以下に減った。水田や畑には雨が一時的にたまるので水害防止の役割も果たしているが、農家が減れば農地はどんどん失われ、簡単にはもとに戻らない。
「農業基盤の弱体化、食料の危機は今日明日にいきなり目に見える物ではなく、ゆるやかに進行するため気づきにくい。しかし放っておけば、確実に10年後、50年後に取り返しのつかない事態になるんです」
1日プラス1品目 国産の農畜産物を選ぶことが持続可能な食と農につながる
食のリスクを回避するために私たちができることは何か。それは一度立ち止まって、国産の食材に目を向けること。中家さんが強く訴えるのは、「『国消国産』の重要性」だ。
「国消国産とは、国民が必要とし消費する食料は、できるだけその国で生産するという考え方です。新型コロナウイルスの感染拡大でマスクの需要が高まったとき、海外からの輸入がストップし、国内ではマスク不足に陥りました。
もし食料で同じことが起きれば、どうなるでしょう? 食料は工業製品と違ってすぐに生産拡大することができません。1日にプラス1品でもいいので、国産の農畜産物を選んでいただくことが持続可能な農業につながる『国消国産』の実践です」
店頭に並び、私たちが日々の食事で口にする野菜や果物は想像以上に手間がかけられている。国産となれば、さらに高い品質が保たれていることも心に留めておきたい。