日清食品HDの研究員(左)と東京大学の竹内教授が「食べられる培養肉」を試食
コストダウンが普及の“キモ”
東京大学(竹内昌治研究室)と日清食品HDは、厚みのある「培養ステーキ肉」の研究に取り組んでいる。昨年3月には研究者による試食を実施した。
「噛んでいく中でジューシーさがあり、肉の脂肪分や鉄分由来の味を除いた、あっさりとした旨味を感じました」(日清食品HD・古橋麻衣研究員)
食品として違和感のない食べ応えだったという。
東京大学と日清食品HDは、厚みのある培養ステーキ肉を目指す
大阪のダイバースファームは、懐石料理店「雲鶴」料理長の島村雅晴氏が、2020年に起業したベンチャーで、鴨と鶏の培養肉を開発している。「いずれはお店でも提供したいし、私たちの技術で養鶏農家さんにも生産してもらいたい」(島村氏)と夢を語る。
培養肉が高コストなのは、培養に必要な血清と成長因子(ともに動物から採取)が高額なためだが、ベンチャーのインテグリカルチャーは、独自技術でコストダウンを狙う。
「弊社のカルネットシステムは、動物の臓器を模した装置で血清代替物を作り、細胞を培養するシステム。これにより培養コストはおよそ千分の一になります」(同社・川島一公氏)
大量生産すれば、コストは劇的に下がるという
一方、日本ハムは2022年10月に、食品由来の成分で血清を代替する技術を開発したと発表した。低コスト化と安定供給が可能になるという。
海外では、イスラエルのステーキホルダー・フーズの技術がユニーク。3Dプリンターで筋肉と脂肪のバイオインクを射出するだけで肉を作成できる。米ブルーナル社は、スシローの運営会社と提携、マグロなど魚肉の培養肉を開発中。将来は、培養魚肉の寿司がレーンを回るに違いない。
取材・文/清水典之 撮影/杉原照夫
※週刊ポスト2023年3月10・17日号