トマホークミサイル(巡航ミサイル)/時事通信フォト
先月、アメリカのシンクタンクが、中国軍が台湾に侵攻したら、中国軍と台湾軍と米軍、そして日本の自衛隊の艦艇と軍隊がどんな結末を迎えるか、シミレーションした報告がある。米軍や日本に支援された台湾軍は中国軍を撃退はするが、どの国も高い代償を伴うと伝えていた。米軍基地を置く日本もどれほど悲惨な目に遭うか、この想定はリアルだ。
想定では、中国軍が数時間のうちに台湾軍の大半を攻撃し、数万人の兵士が台湾に上陸するが、そこに米軍も自衛隊も参戦。ただちに、嘉手納や岩国、横田や三沢の基地から米空軍が出動して、中国はその日本の基地からの攻撃態勢を確認したら、瞬く間に、弾道ミサイルや巡航ミサイルを撃ってくる。となれば、トマホークも出番だろ。ゲームライターでもこれぐらいの筋書きは書けるし、トマホークを用意しようがもはや「抑止力」は無いし、そんな神話は総崩れしてしまうのだ。
とにもかくも、自衛隊も即応戦に出るしかない。このシミュレーションでは、中国は侵攻に失敗する。が、米軍の空母が2隻、米軍や自衛隊の軍艦は数十隻、航空機は数百機、兵士は数万人が失われる。しかも、日本の「軍隊」と基地の協力がないと米軍だけじゃ勝てません、というのが結論だ。
デタラメな防衛費はトマホークの反撃能力代込みの7兆円近くまで盛りつけして、衆議院の忌まわしき多数決で可決されてしまった。これから参議院で審議されるが、その「反撃能力」はどうだろう。このままでは日本中が軍事要塞となってしまいそうだが、世の中、シラーっとしたままだ。子育て予算倍増なんて聞かされてるだけじゃないのか。
敵基地へ攻撃だろうが反撃だろうが、米軍や自衛隊基地の辺り一帯が標的にされることを、国民はほんとに知っているのだろうか。
◆文責・井筒和幸
1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校時中から映画製作を始める。1975年にピンク映画で監督デビューし、『岸和田少年愚連隊』(1996年)と『パッチギ!』(2004年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。その後も 『黄金を抱いて翔べ』(2012年)、『無頼』(2020年)など、さまざまな社会派エンターテインメント作品を作り続けている。コラムニスト、鳥越アズーリFMでも日曜13時からの放談番組に出演中。