微生物のいない土壌では病原菌や害虫が増えやすくなるため、農薬を使わざるを得なくなる。するとさらに微生物の数は減る。一度でも農薬を使うと土壌中に残留農薬がたまり、そう簡単にもとの土壌に戻ることはできないという。
「確かに農薬を使えば害虫は減ります。ところが実は、農作物のビタミンは『ファイトケミカル』といい、野菜や果物が害虫や病気から身を守るためにつくられるもの。虫のいない土壌ではファイトケミカルをつくる必要がないため、農薬を使ってつくられた野菜や果物は、ビタミンも少なくなると言えます。こうしたことから、ヨーロッパでは年々化学肥料の使用を減らし、有機肥料の比率を高めています」
野菜の鉄分やビタミンが減少している一方で、カルシウムは増えている傾向にある。これは、化学肥料によって酸性に傾いた土壌のpHを調節するため、石灰などをまくようになったことに理由があると考えられている。
ところが、化学肥料を使われた野菜には、カルシウムだけでなく「硝酸イオン」が残留している可能性も指摘されている。摂取すると、その一部が体内で発がん性物質の「ニトロソアミン」に変化するほか、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンと結合し、最悪の場合窒息症状につながる恐れもある。
「1950年代、欧米で赤ちゃんにほうれん草の裏ごしを与えたところ、顔色がまっ青になって死亡した『ブルーベビー事件』が起きました。これはほうれん草に残留していた硝酸イオンが原因だとされています。それだけ、野菜は肥料や土壌の影響を受けやすいのです。
硝酸イオンを多量に摂取すると、呼吸器障害やがん、萎縮性胃炎、血管性認知症、アルツハイマー型認知症などの原因になるとも言われています」
※女性セブン2023年3月30日・4月6日号