例えば、日本で最も多く処方されているとされるカルシウム拮抗薬でも、服用することでかえって症状が悪化する体質の人もいる。
「不整脈の一種で、心臓の拍動が遅く脈の間隔が空きすぎる『徐脈』の人は使わない方がいい場合がある。カルシウム拮抗薬の一部は心臓の働きを抑えてしまう作用があるため、より徐脈の症状がひどくなる可能性があるのです。また、頭痛や歯肉が腫れる副作用が見られる場合が時々あります」
心臓の仕事量を減らす作用を持つβ遮断薬は、喘息の症状を悪化させるリスクがある。
「心臓だけでなく、気管支拡張にかかわる作用が出現する可能性がある。その結果、気管支の収縮を招き、喘息の発作が出やすくなり、症状がひどくなる恐れがあります」
利尿薬にも副作用があると注意を促すのは、銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんだ。
「尿から塩分を排出させることで血圧を下げる薬ですが、体内にたまっているカルシウムも一緒に外に出す副作用があります。長期で使い続けるとカルシウムが欠乏するため、骨粗しょう症になりやすくなる。特に年を重ねた女性は骨がもろくなりやすく、骨粗しょう症リスクが高まるため、注意すべき薬です。
また、利尿薬の中でも『アゾセミド』と呼ばれる種類の薬はコレステロール値を上げる副作用も報告されています」(長澤さん)
さらに降圧剤は1種類だけではなく、血圧に応じて複数を組み合わせて処方されることも多いが、その「のみ合わせ」が体調の悪化を引き起こすケースも時に発生する。谷本さんが指摘する。
「近年、高血圧の治療において1種類ではなく、さまざまな作用のある降圧剤を少量ずつ使った方が副作用が少なくて安全だという説が有力になりつつあります。ただしまったく作用の異なる降圧剤を組み合わせるのが基本です。特にACE阻害薬とARBののみ合わせは一般的にすすめられておらず、副作用のリスクが高くなるとされています」