代替食品の市場は拡大
代替チーズや代替アイスクリームなど、まったくミルクを使わない“乳製品”も、すでに海外では普及し始めている。
「合成生物といって、細胞の中に合成DNAを入れて作るミルクです。アメリカで発売され、環境にやさしく動物を殺さないとしてヴィーガンやベジタリアンに人気です。完全菜食主義の人は卵や乳製品も一切口にしないので瞬く間に広まりました。しかし、遺伝子組み換え技術を使っていることが表示されていないことが問題視されています。これも『未知の技術』だということをわかっておく必要があるでしょう」
小倉さんは、代替食品はもはや「超加工食品」だと断言する。
「菓子パンやお菓子、カップラーメンなど、添加物が大量に含まれる食品を『超加工食品』と呼びますが、代替肉や代替卵なども立派な超加工食品です。
フランスのパリ第13大学の研究チームによると、超加工食品の摂取量が10%増えると、糖尿病発症率が15%上がるという研究結果が出た。フランス国立保健医学研究所の調査では、摂取した食物の総量に占める超加工食品が10%上昇すると、がん全体の罹患リスクが12%増加するとの結果がある。スペインのナバラ大学の研究では、超加工食品を1日4回以上食べていると、死亡リスクが62%上昇することがわかっているなど超加工食品の危険性はいまや世界が認識している。代替食品はまさにその危険をはらんでいるのです」
食品表示の確認はマスト
日本人の多くは、「日本の食は安心・安全」と思い込んでいるが、それはもう幻想でしかないと堤さんは言う。
「日本における食の安全基準は海外よりも厳しいと思っているかもしれませんが、そんなことはまったくありません。例えば日本で売られているポテトチップスも、アメリカでは『発がん性のものが入っている』と明記されて販売されています。
日本は農薬の基準値も非常に緩い側面があり、台湾の友人には『日本のいちごは農薬がすごいから、台湾では売れないよ』と言われました。遺伝子組み換え食品の表示法や、海外輸入食品に投与された農薬についてのルールも緩められている。知らされていないのは日本の消費者だけなのです」(堤さん)
小倉さんも、代替食品への安易な消費拡大にストップをかける。
「アメリカにはヴィーガンが970万人、ベジタリアンが430万人いるので、もともと代替食品を受け入れる素地があり、そうした食への感度も高い。しかし、そういった食の趣向があまりない日本でもフードテックなどと称して開発が進められ、その安全性についての検証もされないままに推進され、大きな動きになっていることに不安を覚えます」