2008年に日本代表として世界大会で戦った美馬氏(写真/AFP=時事)
世界大会で圧倒されたプロフェッショナリズムと運
それらは、美馬氏自身が2008年に日本代表として世界大会で戦った経験からきている。
「世界大会は本番だけが勝負ではないんです。開催地で飛行機を降りた瞬間から審査が始まり、約2週間、ずっと観察され続けます。もしかしたら会場のドアマンが審査員かもしれないし、ヘアメイクをしてくれた人が審査員かもしれない。見られていないのは、お手洗いとシャワーの個室だけ。ホテルの部屋ですら、他国のコンテスタントとルームシェアでひとりになる時間はありません。
2008年はベネズエラ代表のダイアナ・メンドーサが優勝しましたが、どんな瞬間でも彼女は完璧でした。その差は、アマチュアの中にひとりだけプロが混じっているくらい。いつ誰が見てもダイアナは外見や立ち振る舞いに品があって、みんなが納得する優勝だった。気遣いを常に絶やさないことはもちろん、どんな時でも品を保つことが求められる。今年のメンバーもこのトレーニング期間で、その意識付けをしてほしいです。日本人は教養があるので、基本的に品が備わっていると思います。ただ、それをセルフプロデュースできているかは、人によります。教育が欠けてしまうと、第一印象で品を表現することができない。そのための技術も伝授しています」
ネイルの色や髪型、ファッションなどをどう選ぶべきか、トレーニングではひとりずつ具体的な指導が行われる。取材した日はネイルのプロを招き、自分の肌の色を自覚するためのレクチャーが行なわれていた。
「ネイルでは清潔感が見られます。ネイルで清潔感を出すには、正しい『ヌードカラー』を選ぶことが重要です。アジア人の肌は黄色がかっているので、色選びを間違えると、手入れをしていない黄ばんだ爪に見えてします。ケアしていることが伝わらないばかりか、清潔感が失われて、逆効果になってしまうんです。そうした誤解を生まないために、その人の肌の色に近い、自然なヌードカラーをカウンセリングします。彼女たちの品を磨き上げるための細かなワンプッシュをすること、それも私たち運営の役目です」
また、2008年の大会では優勝者以外にも、美馬氏にとって忘れられない出場者がいるという。
「トップ10に選ばれた、アメリカ代表のクリストル・スチュワートです。私たちの代はベトナムのニャチャンで大会がありました。彼女はベトナム戦争があった地で、それを踏まえた上でアメリカの代表として観衆へ語りかけました。ステージを歩き回りながら、まるで大統領が演説しているような説得力があって、10年以上経ってもまだスピーチの光景が目に焼き付いています。発信力が抜群で、ダイアナでなければクリストルが優勝するだろうと思ったくらいです」
ずば抜けたスピーチ力を持つ彼女が優勝候補から陥落してしまったのには、意外な理由があった。