「厚労省が推奨する検診以外にも、高額の自費診療によるものがいくつもありますが総じておおすめできません。例えば10万円前後でよく提供されているPET検査によるがん検診は『がん死亡率を減らす』というエビデンスに乏しいことが指摘されています」(名取さん)
室井さんも指摘する。
「胃がんや大腸がんの発見に有効とされる腫瘍マーカーも、あくまで抗がん剤の効果などを測定するもので、追加出費がいるわりに早期発見には向きません。
また、卵巣がんは症状がない人に検査をしてもほぼ見つからない上に、がんを見逃したり、逆に誤った診断に基づく治療を受けることになったりしてしまい副作用で苦しむケースもあります。アメリカで予防医学について数々の声明を出している団体は『卵巣がんの検査は不要』と明言しています」
とりあえず受けておいても害はないのでは……そう考えるかもしれないが、さにあらず。早期発見が見込めないばかりか、体にとって負担をかけることにもなる。日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之さんが言う。
「がん検診による過剰診断、過剰治療はいまや国際的に問題になっています。がんには進行が非常に遅かったり、進行しないがんもあり、これらは本来なら放っておいてもいい。しかし、医療従事者は“放っておいたらどうなるかわからない”ということで、見つけた以上は治療する。しかも検診には見逃しもあるし、偽陽性、つまりがんでないものをがんだとして見つけてしまうこともあるのです。早期発見と早期診断は別物だと考える方がいい」
過剰診療の危険性に加え、がんと診断されることによる心理的負担も大きい。
「乳がん検診も、国際的には2年に1回を推奨されていて、国立がん研究センターでも同じ。科学的にいうと、がん検診は過剰に受ける必要はないのです」(勝俣さん)