内視鏡による早期発見の期待が高まっている(写真/PIXTA)
赤身肉の摂取増でがんリスク48%増
検診とともに「がんで死なない」ための鍵を握るのが、「生活習慣」だ。喫煙や飲酒、睡眠、食生活など、いろいろな要素があるが、室井さんは、いまもっとも重要視されているのは運動だと指摘する。
「最近、海外の研究では『運動すると長生きする』ことへの評価が高まっています。適度な運動ががんのリスクを減らすだけでなく、がんになってからでも、運動すると生存率が上がるという研究結果が出てきている。
理由は代謝改善効果でしょう。エネルギーのコントロールがうまくいかないと、がん細胞が余計に増殖してしまう。運動によって代謝を改善することが、エネルギーを上手にコントロールすることにつながるのです」
食生活ががん罹患に与える影響が大きいのは大腸がんだ。女性の罹患率が高く、死亡率も高いが、その主な要因は食生活にあるという。2011年の国立がん研究センターの調査では「牛や豚などの赤身肉の摂取量の多い女性は結腸がんのリスクが48%アップ」したことが報告されている。
「野菜や果物の摂取不足とがんリスク増加の関連が疫学研究で示されています。予防のためには、野菜や果物を充分に摂取すること。塩分の摂取量が多いと胃がんになりやすいので、塩分は控え目にすること。また、熱い飲食物は食道がんのリスクを上げるので、少し冷ましてから飲食することも心がけましょう」(名取さん)
生きていくなかで、どうやっても逃れることのできない病になりつつある、がん。だが、国立がん研究センターの調査から、病期が早い段階で発見すれば、多くの人が生存することがわかってきている。治療に対する知識を深めるとともに、がんの早期発見のために必要な検査と、必要のない検査を知ること。そして、治療技術が進化したいまでもなお生存率が低いがんが存在する以上、なるべくがんに罹らないような生活習慣を身につけることも大切だ。
いまはまだ「治らないがん」も今後「治るがん」になる可能性はゼロではない。がんとしっかりと向き合いながら、人生100年時代を元気に生き抜こう。
※女性セブン2023年6月22日号