出走させるからには調教過程も体調も万全、自信を持って送り出しているのですが、こちらの目論見通りに結果が出ることは少ないものです。特にこの時期は天候も不安定。言い訳になるかもしれませんが、芝で軽い走りをする馬は重馬場が合わなかったり、逆にパワフルな走りをする馬が、脚抜きのいい馬場でスピード勝負になってしまったりすることがあります。調教の効果が出てパドックでは落ち着いていたのに、ゲートに入った時に隣の馬が暴れていたのに気を取られてスタートがうまく切れなかったりというケースや、3コーナーまで気分よく走っていながら、勝負どころでスピードアップした時についていけなくなったりすることもありました。
6月17日(土)には6頭の未勝利馬を出走させました。うち4頭は前走掲示板に載っていた(5着以内)ので、今度こそと気合が入りました。ダートから芝に戻す、距離を延ばす、また環境を変えるために函館競馬場に滞在させての出走など、午前中だけで5頭が出走しましたが2着が最高。一つ勝つことの難しさを痛感しましたが、6頭目のホウオウムサシが勝ってくれました。能力があるのはわかっていましたが、気性的に難しいところがあるので、ゲートを重点的に、時間をかけて調教してきました。うれしいというよりも、ホッとしたというのが実感です。
(次回へ続く)
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2023年7月14日号