ライフ

タトゥーとアートメイク、注目される線引きや残る課題とは?日本タトゥーイスト協会がタトゥーの定義を発表

タトゥーは美術目的(写真はイメージ)

タトゥーは美術目的(写真はイメージ)

 2023年6月27日に、一般社団法人日本タトゥーイスト協会が、タトゥー施術行為の定義を発表し、いわゆるアートメイクとは区別できるとする考え方を示した。まだ課題はありそうだが、タトゥーとアートメイクとの間の線引きは明確になることになりそうだ。

厚労省がアートメイクを医療行為と通知

 ヒフコNEWSでも伝えているように、そもそもタトゥーとアートメイクは、いずれも針先に色素を付け、その色素を皮膚の中に入れる行為。その点では共通し区別しづらい側面がある。

 そうした中で、厚労省は2001年にアートメイクは医療行為であると通知を出し、規制強化に動いていた。一方、2020年、最高裁判所の判決でタトゥーについては医療行為ではないと判断が示され、類似した施術であるアートメイクの取り扱いはあらためて注目された。

 厚労省では、最高裁判決などを踏まえ、アートメイクの取り扱いを検討し、その見解も待たれていたが、7月の通知により、ようやく決着に至った。

 通知によれば、厚労省は、歴史的な背景と社会的な位置づけの違いから、アートメイクについては医療行為であるという判断を示した。ヒフコNEWSで詳細は伝えているが、ポイントとしては、タトゥーは歴史的に医師免許を持たない彫り師が行ってきたもので、しかも医療行為の外に置かれてきたという点だ。それに対して、アートメイクについては、ほとんどが医療機関で行われており、タトゥーとは異なり、医療行為であるという見解が示された。

「体の構造物、化粧の代替を描く」はタトゥーではない

 今回、6月に日本タトゥーイスト協会がタトゥーの定義について発表した。厚労省が3月に同協会に対して問い合わせたことから、策定作業が続いていた。一般の意見も集めた上でこのたびまとまった定義は次の通りである。

「タトゥー施術行為とは、針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為のうち、美術的な目的で、絵画、文字、記号、文様等を描く行為(施術箇所に本来存在しうる人体の構造物(眉毛、毛髪、乳輪・乳頭等)を描く行為及び化粧に代替しうる装飾(アイライン、チーク、リップ等)を描く行為を除く。)をいう。」

 ポイントとしては、ここにあるように、眉や毛髪などの構造物を描いたり、化粧を描いたりするのはタトゥーの定義から外れるという点だ。タトゥーはそれらとは異なり、美術目的で描かれるものであると明記している。

 同協会では、定義の策定のプロセスで寄せられた一般の意見に対する回答も公開している。それを見ると、アートメイクとタトゥーの区別や分ける意味が分かりにくいといった意見も多く寄せられた。同協会は裁判の判例に基づいて回答しており、前述のポイントについて強調した上で、定義に沿って判断すると区別が可能と説明している。

 つまり、皮膚に色素を入れる点でアートメイクとタトゥーが共通していても、美容整形の目的で、本来の顔にある眉毛やアイラインを描いたり、化粧に代替するものであったりするならば、医療行為と考えられる。

 こうした点も踏まえると、今後の課題の一つとして考えられるのは、美術目的として書かれた場合でも、元からある眉に近いような形の場合の判断。どこから美術目的として見なすかは、議論の余地がある。

タトゥー業界と厚労省が情報交換

 厚労省の通知をきっかけとして、美容医療としてのアートメイクについては医療行為と判断され、違反すると罰則が適用される可能性も高まるのは確かだろう。一方で、美術目的で行われるタトゥーは、医療行為ではないという見解がはっきりしたことにより、実施しやすくなり、社会的な受け入れが進む可能性もある。

 美術目的の解釈といった課題は残る可能性はあるが、アートメイクとタトゥーの間の線引きは明確になることが予想される。

参考文献
タトゥー施術行為の定義

厚労省がアートメイクは医療行為と通知、タトゥーとの違いを最高裁判決などから判断

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
奈良公園で盗撮したのではないかと問題視されている写真(左)と、盗撮トラブルで“写真撮影禁止”を決断したある有名神社(左・SNSより、右・公式SNSより)
《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン