(時事通信フォト)

事件現場跡地に建てられた「順子地蔵」に手を合わせる被害者の父・賢二さん(2021年、時事通信フォト)

犯人は「ストーカー」?

 DNA鑑定は現在、4兆7000億人に1人の確率で個人識別を行うことができるが、事件から四半世紀余りが経過しても犯人逮捕には至っていない。事件から1か月となるのを控えた9月末、警視庁6階の1課長室で午前中に行われた定例記者会見の席上、寺尾1課長が「ストーカーなるものが存在するのかどうか」とつぶやくように語ったのが忘れられない。

 今でこそストーカーはよく知られているが、当時はその言葉に馴染みのある日本人はほとんどいなかった。1999年に埼玉県桶川市で起きた桶川ストーカー殺人事件で社会問題化したことで広く認識された。会見でつぶやかれた語意をすぐに調べたが、1980年に元ビートルズのジョン・レノンがNYで熱狂的なストーカーに殺害された事件が紹介されていた程度だった。

 特捜本部は血痕という決定的な物証に大きな期待を寄せ、ストーカー疑惑のある人物が捜査線上に浮かべば、DNA鑑定で犯人が断定できると過信していた。

 事件現場は京成電鉄金町線柴又駅の北西約250メートルに位置し、人気映画『男はつらいよ』シリーズの主役「寅さん」ゆかりの寺「柴又帝釈天」に程近い。駅前には寅さんの銅像があり、すぐ近くには演歌歌手の細川たかしさんが日本レコード大賞を受賞したヒット曲「矢切の渡し」の船の発着場所もあって、観光地としてにぎわう。

 不特定多数の観光客らが押し寄せる特殊な現場環境も障壁となり、血痕に頼り切った捜査は迷走。3か月、半年、さらに……と捜査が長期化の様相を見せている中で聞かされたのが、冒頭で紹介した秘められた捜査情報だったのである。前出の捜査幹部OBが語る。

「いまでこそDNA鑑定は日本の治安や自分自身を守るために必要という理解が浸透して、事件や事故に関係した人のDNA型のデータベース化も進んだ。だが当時はDNA鑑定に必要な唾液などの提出を依頼すると『俺を疑ってんのか』などと怒り出すことが普通で、なかなか捜査への協力は得られなかった」

 1990年5月、栃木県足利市で幼女が殺害された足利事件で逮捕された男性は、当時まだ試験導入の段階で技術レベルも低かったDNA鑑定で有罪が確定。正確性が格段に高まった2009年のDNA再鑑定が逆に決め手となって裁判がやり直され、無実が証明された。警察にとっては皮肉にもこの冤罪事件でDNA鑑定は絶対的な信頼を獲得したのだ。

「DNA鑑定」への過信が真犯人を遠ざけた?

「小林さんの事件では交流が親密だった友人知人を『A』。顔見知り程度を『B』。事件当時、現場付近にいた可能性があるだけの人を『C』といったようにランク分けして、まずAの人らに鑑定資料の提出を求めた。けれど、犯人は一向に見つからなかった」(同OB)

 そんな中、期待が寄せられた人物が“幻の容疑者”だったのだ。その人物はCランクの中にいた。小林さんとの面識は一切確認できなかったが、小林さん宅の消火に駆け付けた東京消防庁の消防士たちを後方支援するために地元や周辺から大勢集まっていた、本業を他に持つ消防団のメンバーの1人だった。

「今はDNA鑑定の技術と精度が格段に向上。鑑定数や実績も90年代とでは比べ物にならない。だが当時は高コストでもあった核DNAの詳しい鑑定前にミトコンドリアDNAで簡易鑑定を行うことさえもあった」(同)

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