現在は港区議として活動する斎木氏
「できない理由を考えるのではなく」
あれから1年。斎木さんは参院選では落選したが5万票を獲得。今年4月、自宅のある東京・港区で区議会議員選挙に初挑戦し、4位で初当選した。念願の政治家としてスタートを切った斎木さんは、今も安倍氏が最期に遺した「できない理由を考えるのではなく」という言葉を、動画で繰り返し再生して見ているという。
「この言葉の続きに何を言うつもりだったかわかりませんけど、きっと『できる理由を考える』という意味のことですよね」
そして安倍氏への思いを語った。
「安倍さんは政治家を志すきっかけをくれた人ではありましたけど、業績についての評価は賛否いろいろあると感じています。僕自身、政策的に安倍さんとまったく同じところをめざすということはありえません。でも『できない理由を考えるのではなく』というのはその通りで、政治は実行力が大切ですよね。僕は政治家として、子育てを支え、差別のない世の中を実現する方法を考えていきます」
安倍氏の一周忌を迎えた7月8日、東京・芝の増上寺で法要が営まれた。斎木さんは同じ日の夕方、法要が終わってひっそり静まった時間に増上寺を訪れた。地下鉄の駅から向かう途中の道沿いに、子どもの描いた絵が掲げられている。そこにこういう言葉がある。
「みんなちがってみんないい」
「この言葉がすべてですよね。僕は政治家としてこういう世の中を目指したい。そのために必要なことは、安倍さんが語ったように『できない理由を考えるのではなく』、できるようにするための方法を考えることだと思います」
増上寺で手を合わせた斎木さんの胸に去来したのは、安倍氏の遺した“最期の言葉”を受け継ぎ、安倍氏とは別の形で理想の世の中を目指すという決意だった。
◆相澤冬樹(ジャーナリスト)