ライフ

【LGBTQIA+】性的マイノリティの呼称がどんどん長くなっていくのには理由がある

なぜ性的マイノリティの呼称が長くなっていくのか(写真:イメージマート)

なぜ性的マイノリティの呼称が長くなっていくのか?(写真:イメージマート)

 性的マイノリティを総称する「LGBT」という言葉はよく知られているが、近年のプライドパレード(性的少数者の「自分らしく生きる権利」を支援するパレード)では「LGBTQIA+」が使われるようになっている。なぜ性的マイノリティの呼称が長くなっていくのか。新刊『世界はなぜ地獄になるのか』で、ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)と言葉づかいについて詳細に論じている、作家・橘玲氏が解説する。

 * * *
 ヒトは言葉によって意思疎通する(地球上では)唯一の生き物なので、ひとびとがポリコレのコードに敏感になると、これまでなら気にもしなかったささいな言葉づかいが重大な問題になる。人種問題でこれは顕著だが、ジェンダー問題でも同じことが起きている。

 一般的には、男と女には生物学的な性差(セックス)があり、その基盤のうえに社会的・文化的な性差であるジェンダーがつくられるとされる。だがフェミニストのなかには、生殖器以外の生物学的な性差(とりわけ脳のちがい)を認めない者がおり、男女の性差を強調すること自体がポリコレに反するという雰囲気がつくられてきた。

 ジェンダーをめぐる議論は、性的少数者が可視化されてきたことで、より複雑になっている。

 性的少数者の権利獲得運動は、1960年代にアメリカのゲイ(男性同性愛者)が声をあげたことから始まった。

 キリスト教文化圏では、「男色する者は神の国を相続できない」(聖パウロの第一コリント書)とされ、異性愛のみが唯一正しい性の営みで、同性愛はたんなる性的嗜好(趣味)なのだから、本人の意志で矯正可能だとされてきた。それに対してゲイの活動家らは、同性愛は生得的な性的指向であり、本人の意志で変えることはできず、異性愛者と同性愛者は対等の権利(人権)をもつと主張した。

 その後、この運動はレズビアン(女性同性愛者)、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダーへと拡張し、「LGBT」と総称されることになる。ただしトランスジェンダーは、性的指向ではなく性自認で決まるとされる。

「シスジェンダー」は生物学的な性(セックス)と性自認が一致していることで、異性愛者だけでなく、同性愛者もシスジェンダーに含まれる(生物学的な男/女として、同性を性愛の対象としている)。それに対し「トランスジェンダー」は、生物学的な性と性的アイデンティティが異なるひとたちだ。異性愛者(ヘテロセクシャル)/同性愛者(ホモセクシャル)は性的指向による区別だが、シスジェンダー/トランスジェンダーは性自認(性的アイデンティティ)による区別になる。

 そうなると、まずはシスジェンダーがマジョリティ、トランスジェンダーがマイノリティという性自認による分類があり、さらにシスジェンダーのなかで、性的指向によって、異性愛者をマジョリティ、同性愛者をマイノリティにする入れ子構造が生じる。

関連記事

トピックス

出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー・ポッター役を演じる稲垣吾郎
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演、稲垣吾郎インタビュー「これまでの舞台とは景色が違いました」 
女性セブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン