国会夏休み中の衆参両院議員の「外遊先」一覧
どんな視察なのか。元衆院議員の政治評論家・木下厚氏が経験から語る。
「私も議員時代、ギリシャ、マレーシア、インドネシアなどに行きました。何をしたかというと、名所旧跡をめぐり、現地のおいしいものを食べ、国会議員としての見聞を広めるということになっています。はっきり言って観光旅行でしたよ。観光以外には現地の国会議員との会談なども1日か2日はスケジュールに入っていますが、メインじゃない。あとは大使館に行って地元情勢のレクチャーを受けるというものです。
衆参の外遊は毎年、議院運営委員会が各委員会と調整して外遊を企画し、参加者を募る。そして議員のほうから『行きたい』と希望する。通常国会が終わった後の真夏の時期に、ご苦労様という意味で行かせてもらったという認識です」
渡航先も「観光名所が多いヨーロッパが人気。真夏の時期は涼しい北欧がとくに好まれる」(ベテラン議員)というが、事実、リストの13グループ中9グループがヨーロッパを訪問している。
現地の大使館員がアテンド
視察内容を具体的に見ていこう。リストの視察団には、「日本・EU議員会議」出席のため現地滞在3日間の強行軍でフランス、ポーランドを回ったケースもあるが、期間は1週間以上が多く、中には10日間以上の優雅な日程の欧州旅行もある。
自民党の大西英男氏を団長とする衆院内閣委員会の視察団はなんと11日間の日程でポーランド、ジョージア、ベルギー、フランスを訪問。視察の目的は、「ポーランド、ジョージア、ベルギー、フランスの政治経済等実情調査」とされているが、これでは何も言っていないも同然だ。そもそも、内閣委員会にはこの4か国を視察しなければならない法案などの審議が行なわれているのか。
やはり11日間の日程でフランス、アイルランドから北欧のフィンランドまで足を延ばしたのが衆院憲法審査会会長の森英介氏を団長とする政治経済事情調査班だ。「欧州各国の憲法及び国民投票制度に関する実情調査」が名目だが、なぜ欧州諸国の中でこの3か国の憲法を調べなければならないか。
森氏本人は「フランスは近代立憲主義の母国であり、アイルランドは国民投票を伴う憲法改正が度々行なわれている。フィンランドはNATOへの加盟に踏み切った際の国民的な合意形成の在り方について知るため」と回答した。
また、稲田朋美・元防衛相を団長とする衆院消費者問題特別委員会の3人の議員は、「フランス、イタリアにおける消費者問題等に関する調査」という目的で8月1日から10日までフランス、イタリアを訪れているが、渡航先に観光名所として名高い「バチカン」も入っている。
バチカンは600人強しか人口がいない小国家だ。「消費者数」が少なすぎる気がするが、問題への対策を調査できるのか。