国内

オウムとの闘い、いまだ終わらず…28年前の地下鉄サリン事件直前に“予行練習”が行われた「もう一つの現場」取材秘話

公安調査庁が製作した、オウム事件や教団の現状を紹介する動画(YouTubeより)

公安調査庁が製作した、オウム事件や教団の現状を紹介する動画(YouTubeより)

 1980年代末期から1990年代にかけて数々の凶悪事件を起こし、世間を震撼させたオウム真理教。2012年までに特別指名手配中だったオウム逃亡犯が次々に逮捕され、2018年7月には教団を率いた麻原彰晃ら元死刑囚の刑が執行されたが、それで事件が完結したわけではない。今年8月2日には、法務省が麻原元死刑囚の刑執行前、「詐病の疑い」があることを文書にまとめていた事実が報じられるなど、議論はなお続いている。

 社会部記者として一連のオウム事件を最前線で取材した産経新聞の大島真生氏が、1995年3月20日に発生した「地下鉄サリン事件」前後の出来事について、“もう一つの事件現場”で遭遇した知られざるエピソードを披露する。

 * * *
 その瞬間、まさに背筋が凍る思いがした……。坂本弁護士一家を殺害し、松本・地下鉄両サリン事件で無差別大量殺人を実行したオウム真理教(アレフに改称)。その信者だった元死刑囚たちが山梨県上九一色村(現・山梨県富士河口湖町)の教団施設で地下鉄サリン実行直前にサリン散布の“予行練習”をしていた刹那、わずか300メートル程しか離れていない場所に、当時産経新聞甲府支局(山梨県甲府市)に勤務していた自分がいたという驚愕の事実を後に知った時のことだ。

サリン事件を象徴する「第7サティアン」

 アレフの信者が大阪市内の教団施設への立ち入り検査を妨害したとして公安調査庁から団体規制法違反容疑で今年7月に刑事告発を受けた大阪府警は教団の捜査に着手。殺人など違法行為を繰り返しながら、いまだに順法精神を欠いたままの教団側と警察の闘いは現在も継続中だ。

 地下鉄サリン事件が起きた1995年当時、富士山の麓の広大な土地にサティアンと呼ばれる教団施設が点在していた。そのサティアン群のうち第7サティアンは、サリン事件を象徴する建物。サリンの大量生産に向けたプラント(大型機械)が一時期設置され、横にはプレハブ造りのサリン実験棟があった。

 サリンの漏出で異臭騒動が起き、サリンを化学的に合成した際だけに生成される自然界には決して存在しない物質を、警察が採取したのもここである。この建物の中で地下鉄サリンの実行犯たちは、サリンに見立てた水が入ったナイロン袋を床に置いてビニール傘の先端で突き刺し電車内に撒く練習を行い、サリン入りの袋をここで受け取って、その足で犯行現場へと向かっていたのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
野球人・江夏豊が球界に伝えておくべきことを語り尽くす(撮影/太田真三)
【江夏豊インタビュー】若い才能のある選手のメジャー移籍は「大いに結構」「頑張ってこいよと後押ししたい」 もし大谷翔平と対戦するなら“こう抑える”
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン
11月下旬に札幌ススキノにあるガールズバーで火災が発生(右はInstagramより)
【ススキノ・ガルバ爆発】「男は復縁の望みをまだ持っていた」火をつけた男は交際相手A子さんを巻き込んで死のうと…2匹の犬を失って凶行に
NEWSポストセブン
再婚
女子ゴルフ・古閑美保「42才でのおめでた再婚」していた お相手は“元夫の親友”、所属事務所も入籍と出産を認める
NEWSポストセブン
54歳という若さで天国に旅立った中山美穂さん
【入浴中に不慮の事故】「体の一部がもぎ取られる」「誰より会いたい」急逝・中山美穂さん(享年54)がSNSに心境を吐露していた“世界中の誰より愛した人”への想い
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《真美子さんのバースデー》大谷翔平の “気を遣わせないプレゼント” 新妻の「実用的なものがいい」リクエストに…昨年は“1000億円超のサプライズ”
NEWSポストセブン