脊柱管狭窄症と診断された場合、医師と話し合って治療を進めることになるが、原則は保存療法だ。
「脊柱管が狭くなるのは加齢に伴って誰にでも起こる老化現象で、痛みや下肢のしびれなどの症状が出て初めて治療を開始します。治療は、鎮痛薬による薬物療法や神経ブロック注射に加えて、近年顕著な効果が実証されている運動療法が中心となる。すぐに手術を勧める医師は要注意です。
保存療法を数か月ほど行なっても症状が改善せず、日常生活に深刻な支障をきたす場合には検討してもよいですが、その際の手術方法も慎重に選択する必要があります」(西良医師・以下同)
西良医師によれば、「脊柱管狭窄症の症状が出た人のうち本当に手術が必要なのは1割程度に過ぎず、ほとんどは保存療法で改善する」という。
「固定術」を勧められたら……
それでも手術を検討しなくてはならない場合に、気をつけるべきポイントは何か。西良医師はまず「受ける」べきか、「受けない」べきかの基準を知っておくことが大切だと話す。
「『つま先歩き』や『かかと歩き』ができないほどの足底のしびれは、それ以上症状が進行する前にすぐに手術を考えるべきサインです。また失禁を伴う膀胱直腸障害や足がほぼ動かせないほど重度の神経麻痺が出ている場合も神経組織がかなり損傷していると考えられるので、すぐに手術が必要です。
一方でいますぐ手術に頼る必要がないのは、“立ち上がって歩き出すと痛みやしびれが生じるが、横になっている時は症状がない”段階の人です。これは間欠性跛行の典型的な症状で、寝ている時と立っている時の背骨の状態の違いによって生じるものであり、まずは運動療法などのリハビリをしっかりと実践すれば、多くの場合は症状が軽減されます」
手術が必要となる症状だった場合は、医師と話し合って具体的な方法を決める。脊柱管狭窄症の手術は大きく分けて「除圧術」と「固定術」の2通りがある。