スタンドのファンからの声援に応えるエンゼルスの大谷翔平(時事通信フォト)
日本を代表するアスリートの2人がここまで似ているという偶然にも驚くが、1994年生まれの2人が、同時代の今、日本代表として日本を勝利に導く活躍をするというのはすごい偶然だ。まるで「シンクロニシティ」のようで、単なる偶然の一致とは思えなくなる。シンクロニシティは心理学者のユングが発表した理論で、日本語では共時性や同時性と訳されている。一般的には”意味のある偶然の一致”といわれており、因果関係のない複数の出来事が偶然とは思えない形で、同時に起こることをいう。例としては、しばらく会っていない友人のことを考えていたら、その人から電話がかかってきたなどだ。2つの出来事に因果関係はないのだが、人はそれが同時に起こるということに意味を持たせようとする。
世界的なトップアスリートや天才的なアーティストが、同じ時代に同じような場所で出現し、切磋琢磨しながら活躍してきたケースはこれまでにもいくつかある。そこには組織や集団に身を置くことで同僚や仲間から影響を受ける「ピア効果」の作用が働いていると考えられている。能力や意識の高い者なら、同じような者が集まる集団や環境の中で切磋琢磨することで、個々の能力をさらに高め合うことができるという効果でもある。実際、あるインタビューで渡邊選手はWBCでの大谷選手活躍を「彼を尊敬しています」と絶賛、また「凄い感動しました。僕も頑張ります」という優勝への祝賀メッセージをスポーツライターの杉浦大介氏がSNSで紹介している。渡邊選手の活躍の背景には大谷選手の影響もあるのだろう。
シンクロニシティは時に奇跡のような不思議な偶然を起こすという。よく似た2人の活躍は、物価高にあえぐ低迷ムードの日本に大きな元気をくれた。