解散に反対だという麻生太郎・副総裁(左)、茂木敏充・幹事長(時事通信フォト)
自民党は衆院で現有261議席。総選挙で220議席なら「41議席減」の大敗で、岸田首相の退陣まで視野に入ってくる。調査結果が封印されるのは当然だろう。
とても解散などできそうにない数字だが、それでも首相は解散を諦めきれない。そこで首相は冒頭で触れたように9月26日の閣議で、増税路線から減税への転換を指示した。といっても、首相が挙げたのは企業向け減税ばかりで、国民にとってはぬか喜びさせられるだけの「偽装減税」だ。
減税解散で思い出すのが安倍晋三・元首相の2回の解散だ。安倍氏は2014年11月に「消費増税先送り」を大義名分に解散を打ち、2017年9月には、「消費税の増収分を幼児教育無償化にあてる。税の使途変更には国民の信を問う必要がある」と2度目の解散に踏み切っていずれも勝利した。
政治アナリストの伊藤惇夫氏が指摘する。
「追い詰められた岸田さんは、禁断の減税に舵を切って解散・総選挙を戦うことを考えた。本来、減税は解散の大義名分にはならない。国民の審判を受けるといっても、減税すれば国民は喜ぶに決まっているのですから。それに似たことをやったのが安倍さんだった。
増税路線を転換するには財務省や自民党内の財政再建派議員の反対が予想される。安倍さんは回顧録で『増税論者を黙らせるためには、解散に打って出るしかない』と語っていますが、岸田さんにも解散・総選挙をやれば反対派の抵抗を押し切れるという計算があるのでしょう。安倍さんの成功体験を真似しようとしている」
※週刊ポスト2023年10月20日号