タケモトピアノのロングセラーCMでお馴染みになった財津一郎さん
財津さんは脳出血の直後にCM撮影に臨んだという
CM撮影の時(1997年)は、僕はちょうど脳内出血で倒れた後で。だから、手術で剃った髪の毛が伸びてなくて、五分刈り頭だった。退院して最初の仕事が、タケモトピアノのCMだったんです。
──「ピアノ売って、ちょうだ~い」のフレーズやあのCM構成は、どのように生まれたのですか。
財津:社長さん、あ、今は会長さんですね(竹本功一氏)、彼が僕をすごく好いてくれていたこともあって出ることにしたんですが、撮影に入ってみたら、共演するのは当時の関西の名ダンサーたちでした。一流のね。僕はまだ、脳内出血で開頭手術した後で、やっと退院して現場に行ったら、すごい動きでしょ。ダンサーと一緒に踊ってほしいという話だったのですが、僕は「ちょっとあの動きはできない」って言ったんです。そうしたら振り付け師の方が「それじゃあ財津さんだけ当て振りでいきましょう」って提案してくれて、「ピアノ売ってちょうだい」「電話してちょうだい」って、あの動きを付けてくれた。
で、やってみたらとても評判が良かった。会社も成長して、CMもよく続いてね。「もう今年で終わりじゃないか」って思われてから何年も経っているんだけど(笑い)。いま僕は仕事していないので、僕の最低限の生活を守ってくれているのは、あのCMなんです。
──CMの反響で生活が変わりましたか。
財津:ひとつひとつの仕事を誠実にやっている会社のコマーシャルに出演したという意味では、わりと僕は恵まれていたと思います。今は、わけの分からないコマーシャルばっかりだからね。また、僕にとって最後の主演映画になっている『ふたたび』のロケ地は、タケモトピアノ社でした。