海外では仕事を終えると上下関係はなく、仲間と楽しい時間を過ごしたという
──目標や夢が変わるきっかけは?
「料理人を目指して入ってきても、センスの有無はどうしてもある。ただ、そんな子も客あしらいの才能があったりする。細やかな味付けや盛り付けが苦手で、お世辞にも料理のセンスがあるとは言えなかったけれど、ホールをやりながらワインの勉強をして、今ではフランスでソムリエをしている子もいます。
続けているうちに、得意なことや適性が見えてくるんですね。できることや得意なことが増えると、必ず仕事は楽しくなる。人が伸びるのは、仕事が楽しくなるかならないか次第」
──今後も多くの若者を採用し、育てていくであろう大宮シェフにとって、彼らに最も求めるものはなんですか?
「最終的に一番大事なのは、やはり『まじめさ』でしょう。そして、正直で嘘をつかないこと。料理の技術や知識の前に、人としての根っこの部分が大切。来年の春にも、新しい子がひとり入ってくるんですよ。先日面接をしたんですけど、いい子でしたね(笑)」
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懸命に仕事に取り組む若手スタッフや、これから店の仲間になる若者のことを話すとき、穏やかな笑顔を見せる大宮シェフ。人を育てる難しさを知る氏だからこそ、若者の将来に明るい希望を抱かずにはいられないのかもしれない。
(了。前編から読む)