知事の収賄事件ではゼネコン汚職の竹内藤男茨城県知事(1993年逮捕)と本間俊太郎宮城県知事(同)、業際研事件の圓藤寿穂徳島県知事(2002年逮捕)、水谷建設事件の佐藤栄佐久福島県知事(2006年逮捕、同前知事)と、東京地検特捜部が逮捕したケースが大半。他に大阪地検特捜部の木村良樹和歌山県知事(2006年逮捕)、古くは1976年に福島地検が逮捕した木村守江福島県知事等だ。

 収賄以外では東京佐川急便によるヤミ献金の政治資金規正法違反罪で1992年に東京の特捜に在宅起訴された金子清新潟県知事(同前知事)、徳洲会による資金提供の公選法違反罪で2014年に東京の特捜に略式起訴された猪瀬直樹東京都知事(同前知事)らがいる程度。

 一方の警察は敗戦間もない1949年に西村実造埼玉県知事を警視庁が収賄容疑で逮捕した例や、1976年に平野三郎岐阜県知事を同県警が収賄容疑で書類送検した例ぐらいだ。「ですから宮崎県警による逮捕は警察の大金星なのです」(前出の警察OB)。

県警支えた「刑事警察のエース」と敏腕特捜検事

 スーパークレイジー君の逮捕が「迅速」と言われるのは、議員バッヂに弱い警察が現行犯でも緊急逮捕でもなく、発生3日目で通常逮捕したため。「トラブルメーカーだったとはいえ、扱いには慎重になりがちな現職政治家。十分に捜査した上で令状を取って逮捕した点が素早い対応だと評価されているわけです」(前出の捜査関係者)。

 まして知事の逮捕は警察では異例中の異例といえる。知事には予算案と条例案の議会提出権が地方自治法で独占的に与えられ、警察本部長は議会では単なる部局長の扱いだ。だから都道府県警職員の「給与支払者」は知事。給料を“人質”にとられた警察が知事の逮捕に二の足を踏むのは致し方ない側面がある。

 だが宮崎県警による逮捕は実現した。「その背景にはいくつかの要因があります」と言うのは前出の警察OB。同県警は九州管区警察局管内だけでなく、全国でも「小規模警察の中では意欲・能力共にあるほうだと言われています」(同OB)。それが迅速さにつながり、ある警察庁関係者は「捜査2課は同県警内でも評判がいいそうです」と話す。

“官制談合”を巡っては、この11月に宮崎県串間市の副市長を官製談合防止法違反容疑で逮捕。新田原基地を巡っては2006年に収賄容疑で宮崎県新富町長を逮捕した。基地そのものでなく基地周辺工事が舞台だが「基地の周囲は利権の巣窟。普段から情報のアンテナを張っているということでしょう。捜査2課は結構、粒ぞろいなのです」(同OB)。

 県警の関係者は「デカ(刑事)になるために受ける最初の『任用科』研修とは別に、刑事を成長させるための特別な研修制度を採用して42年ですが、偽造文書の鑑定システム等新しい科学技術を使った知能犯捜査と共に、アナログな捜査手法も教えてます。弱小組織の意地じゃないですが、イマドキ流行らない『刑事魂』を現在でも伝授してるんです」と笑う。

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