秘匿性が高いメッセンジャーアプリ「テレグラム」は全国連続強盗で指示役から実行役への連絡手段として使われたことでも注目された(時事通信フォト)
受け渡し方法は従来のまま
販売サイトや連絡手段としてのSNSはどんどん進化していくが、受け渡しとなると従来の方法が使われている。村杉容疑者が話しているように、密売人が購入した客に送るにはレターパックが使われるケースが一番多いという。密売人がレターパックを使うのは、そこにメリットがあると考えているからだ。まずレターパックは郵便局やコンビニで買うことができ、購入は現金のみ。「いつでもどこでも購入できるだけでなく、現金のみというのは、売人にとって足がつかず使いやすい」(幹部)。
送ろうと思えばポストに投函するだけだ。宅配便だとコンビニや販売店に商品を持参したり、集荷に来てもらったりする必要がある。いくら送付元を偽装しても顔を見られたり、送付した痕跡が店舗や端末に残ってしまう。レターパックなら、日本全国、どこのポストからでも投函可能。「送付元の住所も書かないかニセの住所で送る。たとえ警察がレターパックを押収しても、番号からそれを購入した人物を割り出すことはできないだろう。投函場所が特定できても、それが売人の居宅近くとは限らない。手袋をつけて発送すれば、指紋が出る心配はない。ポスト周辺の防犯カメラや車載カメラに注意すれば、顔がわかることもない」(幹部)。
さらに重要なのは「追跡確認ができること。普通郵便では送付物の到着確認ができないが、レターパックなら封筒ごとに割り振られた番号で、客の手元に届いたかどうかの確認ができる」(幹部)。レターパックプラスは全国一律520円で、対面で届けられる上に受領印か署名が必須となる。確実に注文した客に届けることができるのだ。
「違法薬物の売買は売人と客との信頼関係を作ることが大事だ。最初のうちはレターパックで送り、何度かやり取りして信用できるとなれば、直接取引に変える。選んだ客との間で信頼関係ができれば、その客は常連客になる」と幹部はいう。
受け渡し方法は郵送と直接取引だ。客と日時を決めて直接取引する方法は“手押し”という隠語が使われる。サイトによって郵送は無料、手押しの場合は配送料を取っているようだ。「常連客が付いてしまえば、あえて新しい客を探す必要はない。客にはグラム単位で小分けで販売、常連客であっても多く欲しいという注文には応じない」(幹部)。
ネットで販売すればあっという間に客が集まると聞く違法薬物の密売だが、手を出さない理由を幹部はこう話した。「SNSが進化しすぎて、俺たちシニアになったヤクザはついていけない。年を取れば細かな発送作業も面倒だ。時代は変わる。やっていいものといけないもの、やれるものとやれないものがあるってことだ」。
レターパックをポストから投函すれば匿名で発送できる(イメージ)