またダイハツのスローガン「1ミリ、1グラム、1円、1秒にこだわったクルマづくり」もまた曲解され、社内をおかしくした趣旨の内容も会見で言及している。
「いつのまにか『1円、1秒』だけになったのかもしれませんね。日本の失われた30年というが、それは日本のものづくりも一緒ですよ」
今回のダイハツに限った話ではないが、こうして日本はライバルの大国どころか見下していた国々にまで置いてきぼりをくらい、現在に至っているということか、全部ではないが、それが事実であることは確かだろうと思う。
冒頭のダイハツユーザーの女性は「何もわからない状態」と前置き、こう語る。
「高い買い物ですが、生活のための車をダイハツさんにお願いしたはずなのに残念です。でも、ほとんどの従業員とか働く人は関係ないのに、かわいそうですよね」
第三者委員会は「不正行為に関与した従業員は、経営の犠牲になったといえ、強く非難することはできない」とした。あくまでダイハツの経営が招いた事態で、責められるのは幹部であると。
途方もない影響が確実視されるダイハツの大規模な不正問題と全車販売中止。ダイハツの自動車に日常生活や仕事を託しているユーザー、正規、非正規問わずの現場の人々など、あまりに多くの人々を裏切る、取り返しのつかない事態となってしまった。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経て、社会問題や社会倫理のルポルタージュを手掛ける。