ダイハツ工業本社(大阪府池田市)に立ち入り検査する国土交通省の職員(時事通信フォト)
それにしても膨大な車種、1989年まだ遡ればどれだけの車種が不正のままに市場に出回ったというのだろう。それもあのダイハツが、である。
「ディーラーの営業担当も『ニュースで知っただけ』(20日時点)ということで、わからないとあやまるばかりでした。それはそうですよね、不正に関係ない多くの社員のみなさんには同情します」
技術者の心意気を日常的にくじく連中がいる
第三者委員会は「責められるべきはダイハツの経営幹部」としたが、ダイハツは会見で経営陣による組織的な不正関与は否定した。
私見だが、第三者委員会の公表通り34年前の1989年から不正をしていたとするなら、現在のダイハツの幹部はすべて外部から連れてきているというのだろうか。現在の代表取締役社長はトヨタ自動車から2017年にダイハツへ移った奥平総一郎氏だが、ほとんどはダイハツに入社して年を経て幹部になったはず。「係長以下がやった」「経営陣は知らなかった」はどうだろう。
販売中の車種だけでも不正があったと公表された27車種の累計販売台数は約400万台、ダイハツは10月30日に2023年度上半期の生産・国内販売・輸出実績として前年同期比1.7%増の35万8283台と好調ぶりをアピールしていたはずなのに、一気に奈落の底という格好となってしまった。もっとも、1989年からずっと34年間、不正を続けていたことが明るみとなった今となっては、だが。
別の自動車メーカーに勤務していた80代男性は「現場の技術者が追い詰められていたのでは」と語る。
「少しのミスも吊し上げ、技術の何たるかをわかっていない、わかろうともしない連中が横やりを入れてくる。素晴らしい車を作ろう、みんなが喜ぶ車を作ってやろうという心意気を日常的にくじく連中がいる。1990年代くらいからかな、生産効率と『カイゼン』がすべてで、追い詰められるうちにおかしくなっていく同僚もいた。ダイハツがそうだったかは知りませんが、それがずっと続いているのが、この国の技術の現場ですよ」
ダイハツの第三者委員会はダイハツ社員174名のヒアリングやアンケートも一部公開した。報告書によれば「何か失敗があった場合には、部署や担当者に対する激しい叱責や非難」「自分の目の前の仕事をこなすことに精一杯」とある。それが前出の「他人がどうであっても構わない」という社風につながっている、としている。