2015年10月にハワイで行われたゴルフコンペにて
四川省にある陳さんのご先祖のお墓参りに同行したこともある。
「お墓の前で盛大にバクチクを鳴らす中国式のお弔いには驚いたけど、陳建民さんはバスで何時間も揺られ、さらに2時間も歩かないとたどり着けないこの山奥の村から出てきて、日本に四川料理を伝えてくれたんだと思うと、何とも言えない気持ちになりました。そこに陳さんのルーツもあるんだと、感じ入りました」
番組の最終回では、対決が終わった後で陳さんと抱き合って涙をぽろぽろ流した。終わったという解放感より寂しさの方が強かった。だが、陳さんの訃報が伝えられたときは、それ以上の喪失感だった。
「息子の建太郎くんに来てほしいと言われてお線香をあげに行ったときにマダムと話したんだけど、呼吸器をつけながらも『ちょっととんカツ食いに行こうぜ』って、行きつけのお店に行ってたんだって。それだけ食に対する思い入れが強かったんだね。
もうお骨が置いてあって、それを見たときに胸が詰まってしまった。親友、それ以上でしたから、つらいなんてもんじゃない。なんでおれより若いのに先に逝っちゃうんだよ。ゴルフもマイペースでせっかちだったけど、こんなときまでせっかちに逝かなくてもいいじゃないか。
ぼくもせっかちだけど、もう少しゆっくりしていくから、またゴルフをしよう」
坂井宏行さん
【プロフィール】
坂井宏行さん/フランス料理店『ラ・ロシェル』のオーナーシェフ。フランス料理に日本の懐石料理の手法を取り入れ、世界のグルメたちをとりこに。『料理の鉄人』の2代目フレンチの鉄人。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2024年1月4・11日号