2021年6月の新井元町議

2021年6月の新井元町議

山本一太群馬県知事に送ったメール

 この騒動の背景には、草津の伝統的な入浴法「時間湯」を巡る争いがあるとされている。時間湯とは、江戸時代の末期ごろから始まったとされる草津の伝統的入浴法。高温の湯に短時間、複数回入るといった流れが特徴だ。特定の公衆浴場では、入浴を指導する「湯長」が置かれ、湯治客らが湯長の号令などに従って入浴してきた。草津町はこの湯長制度について、入浴前に湯長が湯治客の体調を聞き取る問診が医師法違反に抵触する可能性があるとして、2019年に廃止。48度だった湯温も42度となった。

 飯塚被告は「時間湯」の湯治客だったこともあり、湯長制度廃止には反対の立場である。彼の著書、『草津温泉 漆黒の闇5』には新井氏の告発が掲載されているが、それ以前の『漆黒の闇』1~4までは湯長制度廃止をめぐる内幕が、飯塚被告の視点で綴られている。刑事裁判では、湯長制度廃止を決めた草津町、黒岩町長に対する批判が飯塚被告の口から聞かれた。

「町長がしばしば嘘をつく人物だと、これまでの取材で感じていました。湯長制度の廃止時期を、2019年6月時点では『翌年3月末』と言っていたのに、その2か月後の7月末に廃止してしまった」

 元湯治客としての愛ゆえか、時折「時間湯」についての発言が止まらず、裁判長に「はいっ、そこまで!」と静止されることもあった。

 検察官は、飯塚被告が電子書籍に新井氏の告発を掲載したのは、その「時間湯」存続のためだったとみていた。論告で「被告人は『時間湯』で湯治をしていたこともあり(時間湯を廃止する)町長の政策には反対の立場だった。新井氏の告発が真実でないかもしれないと認識し、かつそれを認容していた」と指摘。また、飯塚被告は電子書籍の発表前、山本一太群馬県知事にメールを送り、書籍刊行の取り下げと引き換えに、黒岩町長に時間湯存続について提言してほしいと求めたと、自ら電子書籍に記している。

 飯塚被告にとって、黒岩町長からの性被害告発を掲載した電子書籍は、町長に自身の要求をのませるための切り札だったようだ。

 町長室での町長からの性被害を告発し、それが虚偽であると認めたのちに「体を触られた」と主張するなど、根幹となる内容を変遷させながら被害を訴え続ける新井氏。町長との民事裁判の判決は4月に言い渡される予定だが、刑事裁判のほうはいまだ始まっていない。ひとりの町議の虚偽告発から始まった草津町の騒動は、しばらく収まりそうにない。

◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)

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