表情豊かな阿部サダヲ(時事通信フォト)

表情豊かな阿部サダヲ(時事通信フォト)

 あと、この年はイギリスからダイアナ元妃が来日して、世はお嬢様ブーム。当時26才の現天皇陛下のお妃に誰がなるか、当代きっての才媛たちが雑誌を次々にぎわしていたの。働く女はかっこいいけれど、みんなが内心憧れるのは“お嬢様”だったのよね──おおっと、いかん! 思い出という一本の糸を引っ張り出すと、あとからあとから記憶がよみがえってくるのは高齢者の特徴だそうだから、あの頃の話はこのくらいにする。

 で、このドラマが受けているのは、大らかな時代を過ごした昭和のおじさんたちがいま、コンプライアンスだのハラスメントだので汲汲としていることの証明だと思うの。「ホワイト社会」は公明正大で透明性が高いかもしれないけど、「水清くして魚棲まずだぞ!」って心の中で叫んでいるんだと思う。昭和の女の私もほとんど同感なんだけどね。

 そんな窮屈な世の中だけど、ひとつだけ文句なしに、いまの方がいいと思っていることがあるの。

 それは、男が子育てすることが当たり前になったことよ。私の住むマンションは住人の大半が若い家族なんだけど、朝の出勤タイムには、スタイリッシュなスーツ姿のパパがわが子を保育園に連れて行く姿が、いつの頃からか珍しくなくなったのね。電車の中でもそう。もし昭和のビジネス街をバギーを押して歩く若いビジネスマンが何人もいたら、絶対にマスコミが取材に押しかけたって。

 ドラマの阿部サダヲは妻に先立たれて父子家庭だから、「子育てはお前に任せていたはずだろう」などと娘の不出来を母親のせいにするセリフは出てこない。だから温かい昭和のおじさんを笑って見ていられると、私は思っているんだけどね。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2024年3月14日号

(時事通信フォト)

仲里依紗も出演(時事通信フォト)

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