自宅で曲作りをする服部(1962年)
一度は発売されたもののレコード会社に音源が残っていないブギを探し求める人もいる。音楽史研究家でレコード技術者の郡修彦さんはレコード会社の総目録を調べ、記録には残っているが笠置の全集には入っていない曲を洗い出した。
「その後、昔のレコードを集めている全国のコレクター仲間に協力を呼びかけると、何人かが貴重なレコードを提供してくれました。北海道を歌った『北海ブギウギ』や伊豆大島を歌った『大島ブギー』などご当地ものも見つかり、最終的には17曲のブギウギもののレコードを発見できました」(郡さん)
郡さんは『大島ブギー』を収録したCDを3月13日に発売予定だ。ブギウギファンにとって楽しみなのは、今後さらに“再発見”されるブギがありそうなことだ。前出の朋子さんが話す。
「良一には有名な曲も多いですが、録音もされず譜面だけが倉庫に眠っている曲がブギ以外も含めると1000曲ほどあるはず。コレクターのかたがたにとっては遺品のある倉庫はお宝の山なのかもしれません。私たちにとっては段ボールの山なんですが(笑い)。本人が処分しなかったものを私たちが勝手に処分するわけにもいかないので、これからもたくさんの曲が日の目を見るとありがたいですね」
幻のブギがこれだけ盛り上がるのも、ドラマが魅力的ゆえ。朋子さんも母(良一の娘)とともに毎朝楽しみにしていると笑う。
「母はあの時代のことは鮮明に覚えていて、“この曲はよくパパが舞台でやっていた”などと話しながらドラマを見ています。譜面は倉庫に大切に保管するのではなく、人に聴いてもらって初めて生きることができます。祖父が亡くなってずいぶん経ちますが、ドラマのおかげで多くの曲を見つけてもらえて感謝しかありません」(朋子さん)
『ブギウギ』の最終回となる3月29日は奇しくも笠置の命日の前日。その日まで心ズキズキ、ワクワクする日が続いていく。
※女性セブン2024年3月21日号
『神戸ブギ』の直筆楽譜が入っていた封筒。楽譜は3月9日まで、大阪大学中之島芸術センター(大阪市北区)の企画展で公開されている(提供写真)