右目を失明していたスーパーボランティアの尾畠春夫さん
現地に行けないもう一つの理由
車の修理が終わり次第、能登に向かう予定だと語る尾畠さんだが、それにはまた別の条件があるという。
「車が修理で直っても、子どもたちの許可を得られないと行けません。もう私も84歳で年齢も年齢ですから、私の一存でやるわけにはいかないんですよ。息子と娘に『能登半島の被災地に向かいたいんだけど、いいか』という話をして、許可が出たら行かせてもらうし、『やめなさい』と言われたら、その通りにします。ゆくゆくは面倒を見てもらわないかん立場ですから“老いては子に従え”という言葉もありますから、子どものいうことは聞くようにしているんです」(尾畠さん)
今年1月にNEWSポストセブンでは、尾畠さんが右目の視力を失い、胃の一部を切除する手術を受けていたことを報じたが、最近は年齢からくる体力の低下も実感しているという。
「右目はもう完全に見えませんが、右の耳も聞こえません。もう年齢との闘いですね。実は、私は85歳でボランティア活動は一区切りと思っています。まだ体力のあった80歳は、皆さんのお役に立たせてもらって、85歳から90歳までの5年間は自分の夢を叶えたいと思っているんです。今はまだ秘密ですけど5年間、ぶっ続けでやりたいことがあるんです。30年前から考えていることで、まだ子どもに誰にも言ってない私の夢です」(尾畠さん)
ボランティア活動を通して、人々の支援、サポートを続けてきた尾畠さん。一方で、ひたむきに活動を続ける尾畠さんの背中に、多くの人が勇気づけられてきた。尾畠さんにもう一度、聞いてみた。もう赤いハチマキ姿は見ることはできないのでしょうか──。
「あってはならないことだけど、大きな災害が起きて、皆さんがお困りのことがあれば、私ができる範囲のことはさせてもらうかもしれません。こんな“クソたれじじい”で勇気づけられることはないけれど、私にできることはさせていただきたい」
今年の10月で85歳となる尾畠さん。思い描いている夢を語る表情は、少年のようだった。