麻生太郎氏(時事通信フォト)
こう見ると、岸田首相にとっては、今回の裏金議員の処分それ自体が解散・総選挙とその後の自民党総裁選を見据えた「再選戦略」に沿ったものだったことがわかる。
だから真っ先に最大の障害になりそうな反岸田の大物、二階俊博・元幹事長を引退に追い込み、最大派閥の安倍派を大量処分で弱体化させ、同派幹部の中でも「国民が期待するリーダーとしての姿を示せていない」と岸田首相を公然と批判してきた世耕弘成・前参院幹事長を離党勧告処分にして“追放”した。
しかも、引退する二階氏の和歌山2区では同氏の公設秘書を務める長男か三男が後継者として総選挙に出馬すると見られていたところ、そこに離党した世耕氏が参院から鞍替えして「無所属」で出馬する意向と報じられた。
世耕氏の有力支持者が語る。
「世耕さんへの処分は重すぎると思うが、もともと衆院への鞍替え準備をしていたから、離党したことで自民党への遠慮なく衆院選に出馬できるようになった。二階さんの三男が出るとしても、次の選挙は荒れますよ」
岸田首相にすれば、どちらも政敵。潰し合ってくれるなら思うツボだろう。
岸田首相が強気でいられるのは、自民党内の反岸田勢力が一つにまとまれず、さらには党内の支持を集められそうな次の首相候補も見当たらないという事情も大きい。また、「世論調査で内閣や自民党の支持率が下がっても、野党への支持が高まっているわけではない。だからまだまだ延命が可能と自信を深めている」(前出・自民党関係者)のだとみられている。
※週刊ポスト2024年4月26日号