自宅の部屋の様子
妻の首を絞めた「電気コード」その時
「初めは大きな声を出す節子をおさえるつもりで、右手だけで口を抑えてるつもりだったからね。刑事にも検察官にも何度も聞かれたけども、そんなに強烈に抵抗されたっていう意識がないんです。初っ端の取り調べの警察官の調書だと、口から泡を吹いてなんとかって言ったけど、そんな覚えないんだよね」
捜査当局は介護疲れというよりも、衝動的な犯行とみて捜査を続けた。それには理由がある。吉田さんは節子さんの首を手で締めただけではないからだ。
「手で締めた段階でもう、もしかしたら死んでいたのかもしれない。でもね、気を失ったようにも見えて、(節子が)気がついたらうるさいんだろうな、また始まるんだろうなっていうのがあったよね、どっかにね。
ベッドに2人で並んでいました。つき当たりの本棚の上に血圧計をのっけていたから、その電気コードがこう垂れているわけです。また節子が気がついたら、騒ぎ出すんだろうなっていうのが(頭の)どっかにあったんだよね」
吉田さんはまったく動かない節子さんの首にコードを巻き付け力一杯、締めつけていた。沈黙が続き、部屋が重い空気に包まれる。
「(節子さんが死んだほうが)自分自身が楽になるのかなっていう気があったことは事実だよ。だから、こういうことを言うと、また弁護士さんに怒られる。それは独りよがりな感覚でね。それが強固な殺意だって(検察が)いうことになるわけだよね」
ただ、「もうこれ以上、騒いで欲しくない」という利己的な思いだけではなかったのだという。記者が「節子さん自身を楽にさせてあげたい」という思いがあったのかどうか尋ねると、吉田さんはこう答えた。