太白山トンネルの入り口に落ちていた髪の毛の束
事件のあった場所には負の思念がたまっている
「人の死など、何らかの事件があった場所に人は恐れを抱きます。そんな人々の負の思念が蓄積されると、何らかのエネルギーを生み、それがさらにあるはずもない現象を引き起こしていく……。そういった負の連鎖というものがあるように感じます。
ぼくは、元禄時代に起きたとされる事件を基に創作された『四谷怪談』が好きなんですが、あれは歌舞伎の作者、四代目鶴屋南北による創作じゃないですか。でも、あの演目を上演するときは、出演者や関係者がいまだにゆかりの神社に参拝に行きます。これは、人が負の思念を作り出し、そこに災いを起こす呪いのエネルギーのようなものが発動するのを信じているからだと思うんです。
ぼくはこの負の連鎖が生み出すパワーにとても興味があります。事故物件にも似たようなパワーが宿る。人の思いが何かを生み、それが時に人をのみ込み、恐怖を与えるのではないかと思っています」
人の思念がたまる場所は、墓地や山中、トンネルだけではない。いつもの道にも、職場の一室にも、どこにでもある。うっかり入り込むと、恐怖にとらわれてしまうかもしれない。
【プロフィール】
松原タニシ/お笑い芸人、作家。事故物件に住みつつ全国の心霊スポットを訪れ、実際に経験した怪奇現象をYouTube『ぞわぞわチャンネル』で配信。新著に『恐い怪談』(二見書房)。
取材・文/前川亜紀
※女性セブン2024年8月8・15日号